最近「ZEH」と書いて「ゼッチ」と読む住宅をよく見かけるようになりました。これは一体どんな住宅なのでしょうか?ZEHとはNet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語です。通常の住宅では電気などのエネルギーを消費するだけですが、太陽光発電などで一次エネルギーを生み出し、家庭で使うエネルギー収支を「ゼロ以下にする」のがZEHです。簡単に言えば「使うエネルギー≦創るエネルギー」というイメージです。ZEH住宅が普及し始めたのは、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)」に向けた取り組みの一つだからです。
「ZEH」の鍵となる「断熱」「省エネ」「創エネ」
ZEH住宅として認定されるために必要な3つのキーワードがあります。
- 「断熱」
断熱性能を高めることは、ZEH住宅の第一歩となります。具体的には断熱材や窓の性能を高め、暑さや寒さに影響されにくい環境を作り出します。断熱性能を高めれば、冷暖房に使うエネルギーを抑えることが出来ます。
- 「省エネ」
省エネという言葉自体は以前から知られていますが、エネルギー効率の高い設備を取り入れることが必要となります。例えば省エネタイプのエアコンや、高効率な給湯システム、消費電力の少ないLED電球などが代表的です。またHEMS(ヘムス)という、住宅内の消費エネルギーと太陽光発電等で創るエネルギーを確認できるシステムが必要になります
- 「創エネ」
文字通りエネルギーを創り出すこと、つまり太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーシステムを備えることが求められます。「創エネ」で創り出すエネルギーが、消費エネルギーを上回るようにするのが目的です。
ZEH住宅のメリット
ではZEH住宅は一般住宅と違って、どういったメリットがあるのでしょうか。
- 光熱費が抑えられる
「省エネ」と「創エネ」によって、一番恩恵を受けるのが光熱費の削減です。また抑えるだけでなく、余った電力を電力会社に買い取ってもらうことも可能なので、収支がプラスになるケースもあります。ここで誤解してはいけないのは、ZEHは「光熱費ゼロ」ではないということです。エネルギー収支がゼロなのであって、電気代がゼロになるわけではありません。
- ヒートショックを抑えられる
「ヒートショック」とは急な温度差により血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こることです。冬場に暖房の効いた部屋から寒い廊下やトイレなどへ出た時に、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などの病気になることがあります。ZEH住宅では高断熱・高気密を実現するので、夏は涼しく冬は暖かく過ごせます。部屋と部屋の気温差が少なくなるため、ヒートショックが起こりにくくなります。家族が健康的に生活できる環境になります。
- 非常時の電力を蓄えることができる
日本では近年、大型化する台風や線状降水帯による記録的豪雨などの水害、大地震などの自然災害が多発しています。災害時には停電がつきものですが、ZEH住宅では「蓄電池」の設備があるため、非常時にも安心して電力を使うことが出来るのです。災害時のリスクを軽減できるのも大きな魅力です。
ZEHの種類
戸建て住宅で用意されているZEHには次の種類があります。それぞれの定められている一次エネルギー消費量の削減率と特徴を比較します。①ZEH ・断熱 + 省エネで20%以上・創エネを含めて100%以上
②ZEH+ ・断熱 + 省エネで25%以上・創エネを含めて100%以上
※外皮性能のさらなる強化など一定の条件をクリアしている
③ Nearly ZEH ・断熱 + 省エネで20%以上・創エネを含めて75%以上100%未満
※寒冷地や低日射地域など、創エネが十分にできない地域が対象
④ Nearly ZEH + ・断熱 + 省エネで25%以上・創エネを含めて75%以上100%未満
※・寒冷地や低日射地域など、創エネが十分にできない地域が対象
※外皮性能のさらなる強化など一定の条件をクリアしている
⑤ZEH Oriented ・断熱 + 省エネで20%以上
※都市部など土地が狭く創エネが十分にできない地域が対象
住宅の建設地によっても区分があることが分かります。(マンション用のZEH区分は、別の回で解説します。)
住宅ローン控除にも大きく影響
住宅ローン控除の制度が変わり、今後はより高性能な住宅ほど手厚い減税が受けられるようになりました。
「ZEH水準省エネ住宅」は、令和4年・5年入居では最大4500万円、令和6年・7年入居では最大3500万円、控除期間は13年間となっています。「認定住宅(長期優良住宅・認定低炭素住宅)」に次いで、控除対象となる年末残高が高く設定されています。こうした税制優遇の面でもZEH住宅が注目されていることが分かります。
また、ZEH住宅を建てる際には補助金を利用することもできます。ただし、登録されたZEHビルダー(ハウスメーカーや工務店など)・ZEHプランナー(建築事務所など)を利用しなくてはなりません。また補助金にはいくつか種類があり、それぞれ金額や利用要件などが異なるので注意が必要です。
今後住宅の建設、購入を考えている方は、ZEH住宅も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。