空き家問題は先延ばし厳禁!住まいの「終活」を考えよう

不動産コラム

日本では空き家が増え続けており、誰も住まず何にも使われていない家屋は20年前の2倍にも増加しています。この空き家問題は、人口減少や都市化の進行に伴う現象で、全国的に深刻な課題となっています。身近なところでは「実家を相続した」「独り暮らしの親が施設に入所した」といったことをきっかけに、家が空き家となってしまうのです。今回は「空き家問題」について考えてみましょう。

空き家が増え続ける背景

現代の日本で空き家が増え続ける背景は、第一に人口の減少があります。日本の総人口が減少傾向にあれば、当然住宅需要も減少していきます。特に地方部では若者が都市部へ移住するため、家が空いたままになることが多いのです。

さらに高齢化社会が追い打ちをかけます。高齢者が亡くなったり施設に入所することにより、親の家が空き家になるケースが増えています。とんどの人が、「親が亡くなるまで実家をどうするかを兄弟や親族で話し合ったことがない。」という現実があります。たとえ相続人がいたとしても遠方に住んでいて維持管理が難しく、また解体するにしても多額の費用がかかるため、誰も住まないまま放置されてしまうのです。

空き家が引き起こす様々なトラブル

誰も住んでいない家屋は、放置されると様々な問題を引き起こします。

  • 治安の悪化治安の悪化: 空き家は犯罪者の侵入や不法占拠の温床となり、地域の治安を悪化させる要因となります。
  • 景観の悪化: 長期間放置された空き家は建物の劣化が進み、地域の景観を損ないます。庭木の枝が隣地や道路にはみ出して邪魔になることもあります。
  • 衛生面の悪化:ねずみや害虫などが大量発生する、動物が棲みつく、ごみの散乱や外壁の破損・汚れが放置されるなど、衛生上や景観上の問題をもたらすおそれがあります。腐敗したごみの放置による悪臭が発生し、近所に住む人の生活環境に深刻な影響を及ぼします。
  • 災害リスクの増加: 空き家が老朽化すると、地震や台風などの自然災害時に倒壊の危険が増し、周囲の建物や住民に被害を及ぼす可能性があります。
  • 不動産価値の低下: 空き家が増えると周辺の不動産価値が下がり、地域経済に悪影響を及ぼします。

このように適切な管理をせずに空き家を放置することは、所有者やその家族だけでなく、近隣地域全体に大きなデメリットをもたらすのです。

改正「空家法」は何が変わった?

このような問題を解決するため、2014年11月に「空家等対策特別措置法」いわゆる「空家法」が施行されました。以降、倒壊の可能性が強いなど周囲に悪影響を及ぼす空き家を市区町村が「特定空家」に指定し、指導や勧告など所有者に改善を求める対応を行ってきました。それでも空き家が放置される場合には、強制的に取り壊すことも出来るようになりました。

さらに2023年12月、空き家を放置せずにその管理や活用を一層すすめるために「空家法」が改正されました。今回の改正では、適正に管理がなされていない「特定空家予備軍」の空き家も、「管理不全空家」として所有者に指導などを行います。早い段階で空き家にメスが入ることとなりました。

空き家は税制の優遇が受けられない

たとえ空き家になっていたとしても、所有者には固定資産税が課せられます。しかし、空家法が制定されたことによって「管理不全空家」「特定空家」への指導に従わず勧告を受けてしまうと、下記の軽減措置が受けられなくなってしまうのです。

小規模住宅用地(200㎡以下): 固定資産税評価額の6分の1に軽減

一般住宅用地(200㎡を超える部分): 固定資産税評価額の3分の1に軽減

これらの軽減措置が適用除外となると、固定資産税が急増し税負担が重くのしかかります。

住まいの「終活」を話し合おう

今回の法改正では「空家等管理活用支援法人」に指定された民間の団体(建築士、不動産業者、弁護士、司法書士、リフォーム業者など)が、空き家に関する相談や活用希望者とのマッチングが出来るようになりました。解体や回収を行う場合には、地方自治体から補助金が受けられることもあるので是非問い合わせしてみましょう。

日本の空き家の半数以上が相続によるものです。親などが元気なうちによく話し合いをして方針を決めておくことが重要です。相続後は、「誰が住むのか」「売るのか貸すのか」「解体するのか」など、関係者で事前に話し合っておくことが大切です。思い入れのある大事な家だからこそ、将来空き家にしてしまわないために早目に行動しましょう。