年収の1/3以上は借りられない「総量規制」住宅ローンとの関係は?

不動産コラム

お金を借りる時には「年収の3分の1まで」という制限があります。これは「総量規制」呼ばれるもので、我々消費者をお金の借り過ぎから守ってくれています。しかし、これからマイホームを購入しようとする人の多くは住宅ローンを借り入れします。「住宅ローンは年収の8倍まで借入できる」と言われているのに一体どういうことなの?と混乱してしまいます。今回は、「総量規制」と住宅ローンの関係について解説します。

「貸金業法」とは

マイホームを購入しない人でも、普段クレジットカードを利用してショッピングしたりキャッシングを利用する場面があります。いわゆる消費者金融や信販会社は、「貸金業法」という法律の範囲内で業務を行っています。この業法は2006年(平成18年)に施行されたのですが、主な目的は返済しきれないほどの借金を抱えてしまう「多重債務問題」の解決でした。

ちなみにお金を取り扱う「銀行」「信用金庫」「信用組合」「労働金庫」などでも様々な融資をしていますが、これらは「貸金業者」には当たらないので貸金業法も対象外となります。(別途「銀行法」の対象となります。)

「総量規制」の制定

その貸金業法が2010年に大きく改正され、「総量規制の制定」と「上限金利の引き下げ」が行われました。

まず「総量規制」とは「年収の3分の1を超える借り入れは出来ない」新たなルールで、さらに借り過ぎ・貸し過ぎを防止できることになりました。これ以降、年収300万円の人が貸金業者から借入できるのは100万円まで、となりました。(対象となるのはカードローンやキャッシングです。ショッピングのクレジット払いは含みません。)

「総量」とあるのは、「貸金業者1社に対して年収の3分の1以内」という意味ではありません。現在の借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借入れをすることができなくなるのです。ちなみに貸金業者も「指定信用情報機関」で現在の借入残高を確認していますので、他社で借入していることは筒抜けです。申込をする際には、源泉徴収票や所得証明書など年収を証明する資料の提出が求められます。

二つ目の「上限金利の引き下げ」はいわゆる「グレーゾーン金利」を規制するものです。現在の上限金利は利息制限法で定められた水準(貸付け額に応じて15~20%)となっています。よくテレビで「過払い金」のCMが流れていますが、これは新しい法律が施行される以前に20%を超える金利を支払っていた人が「払い過ぎた金利」を取り戻せることになったからです。

「住宅ローン」は総量規制の対象外

では、私たちが住宅ローンを借り入れしようとする際にはどうなるのでしょうか?結論から言うと、住宅ローンは「総量規制」の対象外ですので年収の3分の1までという制限は無関係です。正式には総量規制の「除外貸付」となる契約に分類されます。

その他にも

・自動車購入時の自動車担保貸付け(いわゆる自動車ローン)

・高額療養費の貸付け

・有価証券を担保とする貸付け

・不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付け

・売却予定不動産の売却代金により返済される貸付け

などがあります。

これら「除外貸付」は、金額が高額であることに加え「担保」が提供されているのが特徴です。万が一、返済が困窮した場合には債権者は担保で回収することが可能なので、総量規制から外すことができるのです。

借り入れの順番を間違えると危険

すでに住宅ローンを借入している人がキャッシングをしようとした場合には、住宅ローンの残高は候規制に算入されません。その後の借入に住宅ローンは影響を与えない、ということになります。

しかし借り入れの順番が逆になった場合には、少々危険です。

基本的な住宅ローンの審査は、希望金額が年収に対して一定の範囲に収まっているかを判断します。しかし、もし他にも借り入れがある場合にはそれらを含めた「総返済額」で審査することになります。他の借入残高がある人は、その内容を申し出る必要があります。一般的には「返済予定表」などを銀行に提出しますが、当初の借入金額、契約年月日、毎月の返済額、借入残高などを正確に把握しておかなければなりません。

先に総量規制の対象となる借入があった場合、住宅ローンの審査にはそれらの残高が算入され、希望した金額が借入できない可能性があります。また同じ「除外貸付」である車のローン、別の住宅ローンの残高がある場合にも同様です。

もちろん総量規制が関係する借り入れがあったとしても、しっかりと年収があり返済負担率が規定内であれば住宅ローンの審査は通過できます。その際には返済計画をしっかり立て、無理のない範囲にとどめましょう。