マイホーム売却で赤字になったら?−譲渡損失は確定申告しよう−

不動産コラム

せっかく手に入れたマイホームでも、何らかの事情で手放さなくてはいけない時があります。転勤になってしまい、戻ってくる予定もない。ローンの支払いが厳しくなって、売却せざるを得ない。古くなったり手狭になって、新しい家に買い替える・・・など。当然、高値で売却できれば問題ありませんが、時には売却出来たとしても赤字となってしまうケースもあります。そんな心配をしていると、売り時を逃してしまうこともあります。

ですが持ち家の売却に伴う赤字は、実は確定申告をすることで「税金で損を取り戻せる」のです。これを覚えておくと随分とお得になります。今回は「売却したけど赤字になった場合の確定申告」についてお話します。

利益が出るか?損益が出るか?

マイホームを売却する際に、買った時よりも高い値段、最低でも同じくらいの値段で売却できれば損していないと思いますか?実は、そう単純な計算ではないのです。

マイホーム売却時の税金の計算式は、次のように決められています。

 譲渡所得=売却価格ー取得費ー譲渡費用

簡単に言うと、売った時の価格から、買った時の価格、買った時の費用、売った時の費用を差し引きます。

買った時と売れた時の値段がトントンだとしても、仲介手数料(売った時の費用)を引くと赤字になってしまった・・・というケースもあります。

この譲渡所得がプラスになった時には、所得税・復興特別所得税・住民税が課税されます。一方、マイナスになった場合は課税はされませんが、「譲渡損失」が発生したことになります。

損が出たら他の所得と相殺できる

売却できても損が出てしまったら、所得税や住民税を課税されることはありません。さらに、売った年のその他の所得(給与所得や事業所得など)と相殺して所得税や住民税を減額することが可能です。損した分を税金で取り戻すことが出来るということです。これを「損益通算」と呼びます。

しかも、その年の所得から損益通算を行なっても控除しきれなかった譲渡損失があると、その次の年、さらに次の年、と3年以内に繰り越すことも出来るのです!

この特例は「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と言います。

ただし以下の適用要件があります。

  • マイホームの売却であること
  • 5年以上所有している家(日本国内)であること
  • 譲渡先が家族や同居の親族でないこと
  • 償還期間10年以上の住宅ローン残高があること
  • マイホームの譲渡価格が上記の住宅ローン残高を下回っていること

この特例は、マイホームを売却して次に買い替えをしなくても受けることが出来ます。

家を買い替えた際の譲渡損失も控除できる

上記のケースと違い、マイホームを売却し新しい家に買い替えた際に損が出た場合はどうでしょう。

実は、同じように損益通算を3年以内繰越控除することが可能です。

適用要件は次の通りです。

  • マイホームの売却であること
  • 5年以上所有している家(日本国内)であること
  • 譲渡先が家族や同居の親族でないこと
  • 売却した年の前年の1月1日から、売却した翌年の12月31日までに新しい家を購入(買い換える)こと
  • 新しい家を購入した翌年12月31日までに入居すること
  • 買い替えた物件の床面積(登記面積)が50㎡以上あること
  • 償還期間10年以上の住宅ローンを借入して購入すること

この特例は「住宅ローン控除」と併用することが可能です。ただし、住宅ローン控除は課税対象となる所得があることが大前提です。したがって、譲渡損失の繰越控除で所得がゼロになってしまった年は適用除外となります。

例えば給与収入800万円で所得が600万円の人がマイホームを買い替え、2000万円の譲渡損失が発生した場合の損益通算はどうなるでしょうか。

売却した年:所得600万円ー譲渡損失2000万円=-1400万円(マイナスで課税ゼロ)

2年目:所得600万円ー繰り越した譲渡損失1400万円=ー800万円(まだマイナスで課税ゼロ)

3年目:所得600万円ー繰り越した譲渡損失800万円=ー200万円(まだマイナスで課税ゼロ)

4年目:所得600万円ー繰り越した譲渡損失200万円=400万円(プラスになったので課税)

4年目でようやくプラスの所得金額となりました。ここから住宅ローン控除が開始となりますが、対象期間の残っている期間のみ利用できる形となります。4年目から10年間(13年間のケースもあり)控除がスタートするわけではないので要注意です。

なお適用条件を満たしていても、合計所得金額が3000万円を超えている場合などは繰越控除を受けることが出来ません。

詳細は国税庁のHPを参照してください。

No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁

せっかくマイホームが売却できたのに残念ながら赤字となってしまった場合も、これらの特例をうまく利用して節税しましょう。