2020年に始まったコロナ禍で、これまでにない経験をした私たちの暮らしは大きく変化しました。衛生面に対する意識が高まったことで、家づくりにも新しい設備や間取りが注目を集めました。例えば帰宅後すぐに手洗いができるよう、玄関に入ってすぐのスペースに設けられた手洗いカウンター。「在宅ワーク」という新しい働き方をするためのワークスペース。これらは引き続き人気を博していますが、アフターコロナとなった現在、どんな設備や間取りが人気になっているのでしょうか。
生活様式の変化に対応した住宅設備
「手洗い・うがい」が合言葉となり、玄関近くの「手洗い場」は非常に人気になりました。子どもに手洗いを習慣づけられる、来客時に洗面所に通さなくても良いことなどから今後も定着しそうです。
また、手を触れずに操作できる「非接触スイッチ」もコロナ禍で一躍人気となりました。ドアの開閉や照明のON/OFFが手をかざすだけで可能となり、ウイルスや細菌に感染するリスクが軽減されました。
非接触という意味では、キッチンの水栓も「タッチレス」に注目が集まりました。
またおうち時間が急増し在宅ワークやオンライン学習が普及したため、高速かつ安定したインターネット接続やWi-Fi環境が重要視されるようにもなりました。オンラインショッピングが急増したことを受けて、「宅配ボックス」も重宝されています。マンションでは共用部に一定数設置されている物件が多いですが、戸建てでも玄関前に設置するケースが増えました。
新しいスペース「ヌック」
最近、ワークスペースとは一味違った「ヌック」と呼ばれる空間が人気です。「ヌック(Nook)」という言葉の由来は英語で「隠れた小部屋」や「角の小スペース」を意味する言葉から来ています。もともと「ヌック」は家の中での小さなリラックススペースや読書コーナーを指しており、特にアメリカやヨーロッパでは古くから使用されてきました。このコンセプトが日本でも取り入れられ、家の中での快適なパーソナルスペースとして人気を集めているのです。
例えばリビングの一角や階段下の空間、窓際などに壁に囲まれた小さなスペースや窓際のベンチシートなどがヌックとして設計されます。あえて扉などを設けず、密閉された空間にしないのがポイントで、家族と共有する大きなリビングスペースとは異なるプライベートな空間を作り出します。
大人だけでなく子どもの勉強スペース・遊び場としても利用でき、個人のニーズに合わせてカスタマイズが可能なので幅広い層に支持されています。
バルコニー不要論
逆にこれまで当たり前とされてきた設備を付けない動きも出てきています。それは「バルコニー」です。
通常、バルコニーは「洗濯物干し場」として利用されることが多いですが、近年乾燥機や部屋干しができるランドリールームの導入、花粉などの影響で外干しの機会が減ったこともあり、思い切って「バルコニーを作らない」選択をする設計が増えています。
一番のメリットとしては、建築費用・メンテナンス費用の節約ができることです。注文住宅の場合は総工費が安くなり、10年~15年に一度必要と言われるバルコニー床のメンテナンス費用もかかりません。
また埃や落ち葉などが溜まりやすい排水溝の日常の清掃の手間も省け、さらにカラスやハトといった鳥の糞害に悩まされることもありません。
さらにバルコニーが空き巣の足場にされたり犯行の目隠しとなる可能性もありません。干してある洗濯物から家族構成を推測される心配もありません。防犯面においても安心度が高まります。
ただしバルコニーを付けないことによるデメリットもあります。バルコニーはある程度の奥行きがあるため、庇の役割も担います。雨風が当たりやすくなることに比例して、窓は汚れやすくなります。また2階のエアコン置き場スペースがなくなるので、地上に設置せざるを得なくなります。配管の距離が長くなるとエアコン工事代が嵩んだり、エアコンの機能が最大限発揮できないケースもあります。スペースを削ってしまうため、ちょっとした荷物置場やごみの一時置き場もなくなってしまいます。
このバルコニー不要論には正解がありません。メリットデメリットをしっかり理解してから決めましょう。
ランドリールームが人気
一方、洗濯物を外に干さない派の人にもおすすめなのが「ランドリールーム」です。外部に選択物干し場を作るのではなく、室内に専用のスペースを作ってしまうのです。一か所で「洗う・干す・取り込む・アイロンがけをする・たたむ」までが完結するランドリールームは、家事の時短にもつながります。雨の日や花粉の季節でも、洗濯物がリビングを占領することがありません。広さは最低でも1.5帖、3~4帖くらいあると非常に使い勝手が良くなります。除湿器が必須になりますが、浴室暖房乾燥機がある浴室と隣接している場合には、扉を開けて利用することもできます。
時代や環境の変化とともに、住まいに求められる機能も変化・進化していきます。新しくマイホームを建てる方、またリフォームを考えている方は是非参考にしてください。