一般的に自営業の方や、会社経営者の方は住宅ローンを借入れする際にハードルが高いと言われています。毎月決まった日に一定の給与が入ってくる会社員と違って、売り上げや事業の好調・不調がダイレクトに収入に影響するからです。経営者の場合は法人=個人と見なされるので、「給与」として収入を得ていても、一般サラリーマンのそれとは大きく異なります。
今回は、自営業や会社経営者が住宅ローンを申込む場合の注意点をお話しします。
収入金額は「所得金額」の数字で計算される
会社員や公務員は「給与収入」なので、源泉徴収票などに記載されている税込年収を基に借入れ審査をします。
しかし、自営業者は毎年確定申告をしています。この確定申告書の「所得金額」を年収として審査されます。確定申告書の書式を見てみると、一番上の収入のカテゴリーには事業の売上げ高を記入します。ここから原価などを差し引いたものが、所得金額となります。いくら売り上げが1,000万円あっても、所得金額の合計欄に500万円と記載されていれば年収は500万円として審査されます。
税金を抑えるためにいろいろと工夫して所得金額を低めに申告しているのが普通です。しかし、住宅ローンを借入れする時に限っては、不利になってしまうケースが多いのが実情です。
「支払は十分して行ける」財政であっても、銀行はあくまで書類上の数字でしか見てくれません。しかも、確定申告をしている場合は3期分の書類を必要とします。会社員が2年分の収入資料で済むのと比べても、より厳し目なのは明らかです。
3年連続で安定して所得金額があること、これが大前提となります。審査の計算式は会社員と変わりありません。返済負担率を出す時に、「所得金額」を用いると覚えておきましょう。
そして、大前提として事業所得で赤字を出さないようにしましょう。
「3期分の決算書」が必要
個人事業主でも、青色申告をしている人は決算書を作成しているはずです。法人を経営していればもちろん、決算書が存在します。この決算書を銀行は非常に重要視します。
一般の会社員と違って業績がその人の収入を大きく左右するので、より慎重に書類の中身を見られます。やはり赤字が出ていると、審査は通りにくくなります。売上総利益、営業利益、経常利益、これらが黒字であること。そして累計損失や債務超過がないことが前提です。
銀行はとにかく、「滞りなく最後まで返済し続けられるかどうか」を見ています。ここは給与収入の会社員も同じです。その事業や法人の「安定性」と「継続性」、これを一番に見ています。
事業資金の借入れがある場合も、注意が必要です。会社員の人がマイカーローンがある場合に、それも含めて返済負担率を計算されるのと同じで、全ての借り入れを含めて審査されます。(フラット35では事業用資金は別に申し立てすれば除外して審査してくれます。)大きな借入れではなくても、資金繰りが苦しい時にキャッシングやリボ払いで補填していると住宅ローンの借入時に影響していまいます。
もちろん支払に遅れがあったりすると個人信用情報にその内容が記載されてしまうので、きちんと支払を継続するのは当たり前ですが、住宅購入を計画している場合はなるべく余計な借入れはしないでおきましょう。
個人事業主が途中で法人化した場合
事業をスタートした時には個人事業主だった人が、途中で法人化した場合。これは各金融機関で審査基準が異なりますが、大抵の銀行では最低でも1期分は決算書を必要とするようです。つまり、法人化してから最低1年は住宅ローンの申し込みが出来ないということになってしまいます。
唯一フラット35では審査が可能なようですが、この場合法人化してからの給与収入を割り戻しして年収と見なします。この点では、サラリーマンの転職のケースと同様です。しかし、少しでも給与をもらっている月数が多いにこしたことはありません。申し込み時期には注意した方が賢明です。
年収金額はあくまでも法人化してからの割り戻し、かつ、これまで個人事業主だった時代の確定申告書3期分も必要とされています。
いずれにしても、数年ほど安定した業績が必要となります。
自営業の方、会社経営者の方が住宅を購入しようと思い立ったら、計画的に確定申告書や決算書を整えましょう。そして支払い遅れや税金の滞納がないようにすることも重要です。
ちなみに、これまで会社員だった人が脱サラして事業を始めた場合はどうなるでしょうか。
このケースは単なる転職にはなりません。会社員のままでの転職と違って、事業を始めてからの毎月の収入の割り戻し、という計算方法は不可能です。フラット35でも最低一度は確定申告を経ることが必須です。(1年未満でも、確定申告さえしていれば事業開始日からの日割りで所得金額を算出します。)