マンションは共同住宅という性格上、各住戸間の権利関係や共用施設、共用設備の維持管理、共有の敷地の管理などに関して、民法ではなじまない部分を補完する法律が定められています。
それが「区分所有法」(「建物の区分所有等に関する法律」最終改正平成23年6月24日法律第74号)で、いわゆる「マンション法」と呼ばれている法律です。区分所有法では、区分所有者の権利義務や責任、共用部分の範囲、管理者の責任や管理組合に関することが決められています。
今回は、「区分所有法」についてお話します。
①管理組合とは
これまでも解説したことがありますが、区分所有法では「区分所有者は全員で団体を構成し、その団体の意思に基づき維持管理を行うこと(区分所有法第3条)」を定めています。この団体が管理組合です。一戸建て住宅の場合は、一部の場合を除いて自分が土地・建物を所有してしているので、その利用や維持管理に関しては全て自分が責任を負うことになります。集合住宅であるマンションと大きく違うのが、管理組合の存在と言えます。
②維持管理費用の負担
共用部分は区分所有者全員の共有財産です。したがって、共用部分にかかる維持管理費用も区分所有者全員で負担しなければなりません。毎月、「管理費・修繕積立金」と呼ばれる費用を徴収するのはこのためです。無論、一戸建て住宅では必要のない経費です。しかし、10年20年と経過すれば様々な住宅機器が故障したり取り替えが必要になることは変わりありません。問題が起きた時点で対応するか、計画的に準備をするかの違いと言えます。
③組合決議の多数決主義
管理組合では年に一回以上、必ず集会(管理組合総会)を開催することとなっています。(第34条)
総会の決議には①普通決議事項と②特別決議事項の2種類の方法があります。
普通決議では議決権の「過半数」を必要とします。管理事項に関すること、管理者の選任・解任、総会議長選出などが話し合われます。
一方の特別決議では区分所有者数および議決権総数の「4分の3以上」、または「5分の4以上」の多数決が必要です。
管理規約の設定・改廃、共用部分の著しい変更などは4分の3以上、建て替えの決議は5分の4以上となっています。
なお、この項目は「強行法規」と言って管理規約で変更することが出来ません。区分所有法で定められている場合以外、数を減することも出来ないことになっています。
つまり、重要な項目については都合のいいように変更出来ないように守られているのです。
ちなみに、建て替えが決議された場合、建て替えに反対した者は賛成した者に対して、自身が所有するマンションの部屋の買取を請求することができるとしています。(第63条)
④分離処分の禁止
マンションの土地は全員の共有となっています。入居者全員が通行したり、利用できる権利を持っています。これを「敷地利用権」と言います。区分所有法では建物の専有部分(区分所有権)とその専有部分に係る敷地利用権(所有権・地上権・借地権)とを分離して処分することは出来ないとしています。(第22条)
専有部分だけを売却する、敷地部分にだけ抵当権を設定してお金を借りる、などの行為は出来ないのです。
⑤賃借人の義務
賃借人(分譲マンションの部屋を賃貸で借りている人、占有者)も建物の管理や使用に関して区分所有者と同様の義務を負うこととなっています。
ただし、区分所有法は分譲マンションにしか適用されませんので賃貸マンションは対象となりません。
⑥義務違反者に対する措置
マンションは共同住宅ですから、入居者は共同生活をしているとも取れます。区分所有法ではルール違反者に対しては次の請求が出来ることになっています。
★行為の差しどめや予防措置
住民がマンションの保存に配慮しない行為、または他の住民の生活を阻害することを行う場合は、管理組合はその行為を止めるよう請求できます。(第57条)
★専有部分の使用禁止
さらに、他の住民の生活を著しく阻害することを行う場合は、その行為者に対して所有する部屋の使用を禁止する請求が出来るとしています。(第58条)
★区分所有権の競売
住民が他の住民の生活を著しく阻害し、他の住民の生活の向上の回復が困難である場合は、管理組合は他の住民の生活を阻害する住民が所有する部屋の競売を請求できるとも定めています。(第59条)
つまり、他の住民に迷惑をかけ続ける住民が存在する場合は、管理組合はその住民の部屋の強制売却を裁判所に請求出来ることが明文化されているのです。
法律と聞くと難しいように感じますが、「区分所有法」は分譲マンションに入居する人にとっては非常に大切で身近な法律です。
内容もさほど難しくないので、ぜひ知っておいてください。