すでにマイホームを購入済みの方でも、2軒目のマイホームが必要になることがあります。いわゆる「セカンドハウス」や「別荘」と呼ばれる住宅がこれにあたりますが、購入の際には利用できる住宅ローンに制限があります。実際の例を参考に、セカンドハウスローンについてご紹介します。
セカンドハウスが必要となる事情
「別荘」は、本宅とは別に一定期間だけ過ごす住宅をさします。軽井沢や熱海などが別荘地として有名ですが、ある程度お金に余裕がないと持つことが出来ません。こうした贅沢な住宅とは別に、実際に必要に迫られて2つのマイホームを所有するケースもあります。
【例①】会社員Aさんは東京で妻子と4LDKの一戸建てに住んでいましたが、単身赴任で大阪の賃貸マンションに住んでいます。元々関西出身であるAさんは、行く行くは地元で暮らしたいと考えていました。子どもが大学を卒業する2年後に大阪で妻と同居を計画しており、大阪市内に2LDK程度のマンションを購入しようとしています。
このように、夫の勤務地の関係で2拠点生活を余儀なくされるケースがあります。Aさんの場合は、東京の一戸建てを購入した時に住宅ローンを借入しており、あと1500万円の残債があります。では、大阪で新たにマンションを購入しようとする際に住宅ローンを利用できるでしょうか。
【例②】会社経営者Bさんは兵庫県郊外の一戸建てに居住していますが、仕事の関係でほとんど大阪市内の事務所に寝泊まりしています。数年前、事務所近くに1LDKのマンションをセカンドハウスとして購入しましたが、大学進学のために子どもが同居することになり手狭になってきました。そこでもう一部屋マンションの購入を検討しているのですが、利用できる住宅ローンはあるでしょうか。
「住宅ローン」の定義とは
そもそも「住宅ローン」は、「自らが居住するための住宅を購入するため」という大前提があります。基本的に生活拠点は一つであると考えるため、同じ人が2つ目の住宅ローンを借入れすることは出来ません。
では上記①のケースで考えてみましょう。
Aさんが所有している東京の一戸建てには、現在1500万円の住宅ローンが残っています。この住宅ローンを完済してしまえば、大阪でマンション購入する際に改めて住宅ローンを借り入れすることが可能になります。
完済するには、①手持ち金で一括返済する、②その物件を売却し、売却益の一部で一括返済する のどちらかになります。しかし、Aさんは東京の一戸建てを手放さず、将来は賃貸に回して家賃収入を得たいとの意向がありました。この場合、大阪でのマンション購入には「セカンドハウスローン」を利用するしかありません。もしくは「利用目的がセカンドハウスも可」としている住宅ローンで申し込む方法がありますが、審査基準はかなり厳しくなります。
一方、例②のBさんのケースではどうでしょうか。すでに住宅ローンとセカンドハウスローンの2本の借入れをしています。Bさんにとっては3軒目のマイホームとなるので、セカンドハウスローンでさえも利用できません。
この場合は、地元の一戸建ての住宅ローンを完済するか、3軒目のマンションを「事業用」としてローンを組む方法が考えられます。
セカンドハウスローンは審査基準が厳しい
セカンドハウスローンを申し込む際にも当然、金融機関の審査を受けます。1軒目のマイホームでの住宅ローン残高がある人は、それを含めての審査となるため与信枠が厳しくなります。審査金利も通常より高くなり、二つのローンを返済可能な十分な年収を求められます。
また、セカンドハウスローンは一般の住宅ローンよりも少し金利が高くなります。とはいえ低金利時代が続く中、有利な条件で借り入れ出来ることには違いありません。そのため金融機関は「投資目的の購入ではないか?」ということを、非常に厳しく審査します。
セカンドハウスローンも、上記のように2拠点生活のために本人が住むことが大前提となっています。セカンドハウスローンを借りておいて賃貸住宅として貸し出し、収入を得るのは重大な契約違反となります。一般の住宅ローン同様、投資目的での利用には一括返済を求められるなど厳しく対処されます。最初から賃貸目的での購入の場合には、「投資用(事業用)ローン」で借り入れをしなくてはなりません。
ただし住み替えの場合に限っては、一時期2つの住宅ローンが重なるダブルローン状態になることが許されることがあります。この場合でも金融機関が猶予期間として許可した期限内に売却し、既存住宅ローンを完済しなくてはなりません。また短期間とはいえ2つの支払いが重なってしまうので、返済遅れがないよう注意が必要です。
そしてセカンドハウスローンは、住宅ローン控除の対象外です。「自己居住用の住宅取得であること」が住宅ローン控除の適用条件となっているので、利用することができません。また、登記をする際にも自己居住用でないため、税率の軽減措置の対象外となります。登記費用が若干高めになることを覚えておきましょう。
2軒目のマイホームを考える際には、住宅ローンは2重に借り入れできないこと、セカンドハウスローンは利用条件が厳しくなることを念頭に進めましょう。