修繕積立金は絶対に値上げされるもの?仕組みと理由を知っておこう

不動産コラム

マンションを購入すると、毎月必ず管理費と修繕積立金が徴収されます。修繕積立金は文字通り、将来の大規模修繕に備えて貯蓄をしていくものです。中には購入時の料金がずっと変わらないと思っている方もいるかもしれませんが、一般的に修繕積立金は値上がりをしていくものと認識しましょう。今回は、修繕積立金の値上げの理由と必要性についてお話します。

修繕積立金の決定方法

そもそも修繕積立金はどのような方法で算出されているのでしょうか。一般的には「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2つに分かれます。

  • 「均等積立方式」は、必要な修繕積立金の総額を期間で均等に割る方法です。将来にわたって金額が変更されないため、当初から支払う金額が明確にわかります。しかし、初期の段階では「段階増額積立方式」に比べ、割高な金額となってしまいます。
  • 「段階増額積立方式」は、数年単位で段階的に積立金を値上げしていく方法です。新築時にはかなり割安な金額に設定されていますが、築年数が経過すると積立金の負担が重くなっていきます。

国土交通省は①の均等積立方式を推奨していますが、全国的に採用されているのは②の段階増額積立方式です。特に新築時は、購入者のランニングコストを抑えることが目的となっているためだと思われます。

中には「修繕積立基金」を設定している物件もあります。これは一次取得者(新築時に最初に購入する区分所有者)に、最初にまとまった金額(数十万円)を納入してもらう方法です。積立基金である程度の資金をプールした状態から積立をするので、ゼロからスタートするよりも将来の値上げ幅を小さくすることができます。ただし、数年後に一次取得者が売却したとしても積立基金は返金されません。

修繕積立金の適正価格とは

では修繕積立金の適正価格とは一体いくらなのでしょうか。

国土交通省のガイドラインによると、最新の平均積立金額はマンションの規模などによっても異なりますが、次のような結果となっています。

【地上階数20階未満】

建築延べ床面積

  • 5000㎡未満・・・335円/㎡・月
  • 5000㎡以上10,000㎡未満・・・252円/㎡・月
  • 10000㎡以上20000㎡未満・・・271円/㎡・月
  • 20000㎡以上・・・255円/㎡・月

【地上階数20階以上】・・・338円/㎡・月

例えば③の区分に当たるマンションで専有面積が68㎡の3LDKの場合、積立金の平均は18,428円となります。

またこれらの金額には、機械式駐車場の工事費用は含まれていません。機械式駐車場がある物件の場合には、別途加算費用を想定することが必要とされています。物件の設備仕様によっても積立金は上下します。

積立金の値上げ予想を知っておこう

将来どのくらい積立金が上昇する可能性があるのか、知らないまま入居するのと事前に知っておくのとでは大きな差があります。

長期修繕計画は新築当初30年後までの計画案が策定されており、大規模修繕は12年周期で行われるのが一般的です。

12年目と24年目に大規模修繕工事が行われるとなると、その年度に大きな支出をすることになります。12年目を迎えた時に、予定している工事を行えるだけの蓄えが必要となります。必要な金額から逆算すると、おのずと値上げが必要となってしまうわけです。

長期修繕計画の中には、例えば5年ごとに積立金を見直して値上げしていく案などが記載されています。購入前に、こうした資料は必ず確認しましょう。

積立金の値上げは管理組合総会で決議される

実は長期修繕計画で値上げする予定となっていても、管理組合の総会で可決されなければ値上げは実現しません。

積立金の値上げは「普通決議」と言って、議決権の2分の1以上(過半数)の賛成があれば可決される項目です。

ただし例外があってマンションの管理規約に管理費や修繕積立金の金額が明記されている場合、修繕積立金に関する決議事項が記載されている場合には「特別決議」に該当します。特別決議は普通決議と違い、4分の3以上の賛成が必要とされるため、可決のハードルが上がってしまいます。

反対が多く否決されれば、積立基金は据え置きとなります。もちろん費用が少しでも安いにこしたことはありません。しかし反対ばかりしてずっと値上げしないことは、果たして良いことなのでしょうか。

値上げをしなかった結果十分な資金が積み立てられず、必要な工事が行えないとなると建物の老朽化が加速し資産価値の下落を招きます。

積立金不足の対策は?

積立金が不足している中で修繕工事を行う場合には、「一時負担金」と呼ばれるまとまった費用を徴収されることもあります。コンスタントに積立ていくか、一時的にまとまった金額を収めるか、どちらかを選択することになります。

また、そうした方法が難しい場合には管理組合で借入をする方法もあります。ただし借入れをすれば返済しなくてはなりません。積立金の支払いに加えて、返済金と利息も上乗せされることは十分に理解しておく必要があります。

一方で工事の内容を見直して仕様をダウンする、工事範囲を狭めてコストダウンするといった、工事費用の方を減額する方法も考えられます。しかし、これも建物の価値を下げる一因になりかねません。

修繕積立金は長期にわたってマンションを維持管理するための必要な資金です。事前に値上げを理解し、それを含めた資金計画を立てるようにしましょう。