住宅ローンの借入先としてよく耳にするのは住宅金融支援機構の「フラット35」、そして民間金融機関の住宅ローンがありますが、もうひとつ「財形住宅融資」があるのをご存知ですか?「財形」というと、給与から天引きされる「財形貯蓄」を想像する方が多いかもしれませんが、まさに財形貯蓄と非常に関連があるのです。今回は「財形住宅融資」の特徴、どんな人が利用できるかをお話しします。
財形住宅融資とは
財形住宅融資とは、財形貯蓄をしている人だけが利用できるマイホーム購入のための公的融資です。財形貯蓄と一言で言っても「一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄」の3種類があり、どれを利用していても構いません。ただし、この貯蓄は給与から毎月一定金額が天引きされる福利厚生制度になるため、勤務先を通じて利用することになります。(残念ながら個人では利用できません。)また公的融資とありますが、フラット35 と同様に住宅金融支援機構が扱う住宅ローンになります。
利用条件
上記の財形貯蓄をしていても、下記の5つの条件を見たしていないと財形住宅融資は利用できません。
①自分で所有、居住するための住宅を建設・購入、もしくはリフォームする方(セカンドハウスや投資用物件は不可)
②財形貯蓄について下記の要件を満たしていること
A)一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄のうち、ひとつでも1年以上継続している。
B)申込日以前2年以内に、財形貯蓄の預け入れをしている。
C)申込日現在の財形貯蓄残高が50万円以上ある。
③勤務先から住宅についての負担軽減措置や住宅援助を受けられる。
④申込日現在の年齢が70歳未満
⑤年収に対する総返済負担率が400万円未満は30%以内、400万円以上は35%以内であること。(フラット35 と同様、他の借り入れを含めた返済で計算します。)
住宅はマンションだと専有面積が40㎡以上280㎡以下、戸建てでは70㎡以上280㎡以下という制限があります。また技術要件が機構の基準を満たしている必要があり、一定の検査を受けた上で「適合証明書」の提出が必要です。
融資の特徴
財形住宅融資の金利は5年固定です。民間金融機関の5年固定よりも金利は低いので、短期固定を利用したい方にはメリットです。しかしながら5年経過すると金利は上昇するかもしれませんし、下がるかもしれません。注意しなくてはならないのは銀行の変動金利の1.25倍ルールのように上限が決められていない点です。その時の経済状況によっては際限なく上がる可能性もあることを念頭に置いておきましょう。
融資限度額は、貯蓄残高の10倍まででかつ4000万円以下(10万円単位)です。利用条件として貯蓄残高が50万円以上とありましたので、最低限度額は500万円となります。もちろん、それまでに積み立てしていた財形貯蓄は自己資金として利用することも可能です。
なお、財形住宅融資には取扱事務手数料や保証料がかかりません。諸費用を節約したい人には非常にお得だと言えます。
団体信用生命保険は一般団信、夫婦連生(デュエット)、3大疾病保障付の3種類があります。もしも持病によって団信加入を謝絶された場合にも、融資自体は利用することが可能です。その場合は、金利がマイナス0.2%となります。この辺りの条件はフラット35 と同様になります。
財形住宅融資が向いている人とは?
以上のように、財形住宅融資にはメリット・デメリットがあります。それを踏まえた上で財形住宅融資が向いている人は、ズバリ「短期間しか借入れしない人」「少額借入したい人」です。
金利が5年ごとに見直しされ、かつ上限が定められていないため、ある程度短期間で完済予定がある人の方が安心でしょう。また、残高の10倍までが利用限度額となっているので、100%ローンにしたい人や高額物件を購入したい人にとっては不足してしまいます。
ただし財形住宅融資は他の融資と組み合わせて利用することも可能です。例えば「フラット35 +財形住宅融資」、「銀行の住宅ローン+財形住宅融資」のパターンです。全期間固定と短期固定、短期固定と変動金利というように、リスク分散したい方にはこの併用パターンはおすすめです。
「そう言えば入社した時から財形貯蓄をしていたな・・・」と言う方は、一度残高を調べてみてはいかがでしょうか。せっかくの福利厚生制度ですから、是非マイホーム購入の資金計画に役立てて下さい。