中古マンションを選ぶ時に悩むのが「築年数」です。実は中古マンションは、その物件が建てられた時期、時代によって品質にかなりの差があります。今回は、マンションが建築された時期・時代を掘り下げておすすめの築年数を探ってみましょう。
時代によって品質が違う理由
大前提としてマンションには建築原価(工事費)がかかっており、時期によって変化しています。新築時に建築原価が高いか安かで、価格も随分変わってきます。
建築原価が高い時期に設備仕様のグレードを高くすると、価格が高くなるのは当然です。売主は少しでも売りやすくするために、グレードを下げたり専有面積を小さくして価格を抑える傾向にあります。
一方で建築原価が安い時期には設備仕様を充実させても価格が抑えられるので、グレードの高いマンションに仕上げることが可能です。専有面積も少し広めのゆったりとした部屋が作られる傾向にあります。
また、マンション創成期と現在とでは法律面でも大きな違いがあります。建築技術の進化によって建物自体の品質も進化しています。これら複数の要因を時代ごとに分けて築年数を考えてみましょう。
1974年以前(築51年以上)
マンションが建て始められた創成期の時代です。共同住宅の複雑な権利関係や管理に関する「区分所有法」が制定されたのが1962年(昭和37年)で、現在でもこの法律が基本となっています。1964年の東京オリンピックでの好景気などいわゆる高度成長期に当たる時期で、団地型のマンションが多く建築されました。中にはヴィンテージマンションと呼ばれる非常に特徴的で通好みの物件がありますが、全体的には品質にもばらつきがありさらに耐震基準がなかったため、この時代のマンションを選択するのはおすすめではありません。
1975年~1982年(築43年~築50年)
マンションが大量に建築された時代ですが、まだまだ耐震基準は「旧耐震」で建物自体の品質も劣っています。例えば壁のコンクリートの厚さは120ミリが主流で薄く、配管も錆びが出やすくメンテナンスが大変でした。また和室が多く、全体的には狭いと感じる間取りが多いです。団地型のマンションの大きな特徴である、「エレベーターがない」というのもネックです。この時代までのマンションは現在の耐震基準を満たしていないので、やはり選ばない方がよいでしょう。
1983年~1987年(築38年~築42年)
耐震基準が改正され「新耐震基準」のマンションとなった時代です。耐震基準が変わったことでコンクリートの暑さも150ミリのものが一般的になりました。また配管部分にも塩ビの素材が使われるようになり、錆びることなく耐久性が大幅に高くなりました。中古マンションとして購入しても大丈夫な時代です。
1988年~1991年(築34年~築38年)
この時代はいわゆる平成バブル時代です。全国でマンションブームとなり、豪華な建物が増えた時期です。建築原価は高めではありましたが、都心部では豪華=高価格でも取引されていました。また郊外にもたくさんマンションが建築された時期でもあります。
1992年~1994年(築32年~築34年)
バブル崩壊後、日本経済が落ち込んでしまった時期です。マンションの建築自体も激減し、購入できる人も限られてしまうという暗黒期でした。マンションの価格を少しでも抑えるために、小ぶりな部屋や質を落としたものにならざるを得なかった時期です。
1995年~2000年(築20年~築31年)
マンションブームが再来した時期で、品質も大きく改良されます。コンクリートの厚さが180ミリのものが増え、配管も錆びにくい素材が主流となり、天井高が高い建物が増えます。オートロックや宅配ボックスといった、現在では当たり前の設備も主流となりました。さらにバリアフリー性の差も顕著になってきた時代です。全体的には品質が良い時代なので、中古マンションとしてはおすすめと言えます。
2001年~2006年(築19年~築24年)
マンションの基本性能が上がった時期です。2000年を超えたあたりから建築技術や省エネ性能が向上します。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」いわゆる「品確法」が2000年からスタートし、住宅性能表示制度によって第三者が物件を検査・評価する時代に入りました。欠陥住宅に対するトラブル防止が強化された時代です。
建築技術の向上で「二重床」や「外梁工法」「バリアフリー」が一般化し、住宅そのものの居住性や機能性がアップした時期です。バブル崩壊からようやく立ち直りかけ、建築原価も非常に安い時期だったことに加え、良い場所でマンション用地が入手できる時代でした。立地も良く品質の高いマンションが建設された時期と言えます。
築年数的に一度大規模修繕工事が済んでいる物件ですので、管理の状態を判断するのにも適しています。
2007年~2008年(築17年~築18年)
現在ほどではありませんが建築費が上がった時代で、土地相場も上がったミニバブル時代です。やや部屋の広さが狭くなり、グレードも落とさざるを得ない時期でした。
2009年~2013年(築12年~築16年)
2008年に起こったリーマンショックによって世界的な不況に入ります。この時期は土地相場が非常に安く、建築費も非常に安くできた時代です。歴史的な円高もあって建材も安く抑えることができ、非常に高品質なマンションが建てられました。さらに2011年の東日本大震災を受け、免震や制震の構造体のマンションが増えました。
2014年~(築11年以下)
アベノミクスが2013年に始まり、日銀による異次元金融緩和政策などによって、土地代、マンションの価格、建築費が上昇します。円安によって建材も値上がり続け、新築マンションは非常にコスト高となっています。専有面積が一時期よりも小さめが主流となり、仕様も出来るだけ落として価格を抑えています。築年数は浅めですが、品質や仕様部分をしっかりと確認しましょう。
中古マンションを買う魅力は価格が安いことではありますが、安かろう悪かろうでは意味がありません。築年数とともに、時代背景も念頭に物件選びをしてみてはいかがでしょうか。