不動産登記法が変わる!(2024年4月~)放っておけない手続きとは?

不動産コラム

マイホーム購入とは切っても切れないのが「不動産登記手続」です。不動産登記とは、不動産の現況・権利関係を、法務局に備えられる「登記記録」に入力するための申請手続きです。主に売買契約などによって所有者が変わった時、銀行から住宅ローンを借入した時などに必要となります。

この手続きに関する「不動産登記法」が2024年4月に改正され新しくスタートしました。今回は、主な改正ポイントについて解説します。

本人確認の厳格化

不動産登記はわたしたちの大切な財産である土地や建物の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し、これを一般公開することで権利関係などの状況が誰にでもわかるようにしたものです。これによって、取引の安全と円滑をはかる役割を果たしています。そのため司法書士や宅地建物取引士には、取引の当事者の本人確認を厳格に行うことが義務付けられています。

本人確認の手法としては、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポート※2020年2月3日以前に交付されたもの、健康保険証など)の提示を受け、コピーを取得するのが一般的です。そして改正法では氏名、住所、生年月日に加え、「取引を行う目的」「職業」を追加で確認することになりました。

契約が法人名義の場合には、商業登記簿謄本にて名称、所在地に加え、「取引を行う目的」「実質的支配者の本人特定事項」が追加されています。

日本以外の住所で登記する場合

不動産登記の当事者になる人は、国内に居住する日本人だけではありません。日本以外の住所で登記される方に該当するのは

  • 日本国内に住所を有しない外国人
  • 海外在住の日本人(海外赴任などで日本に住民票がない方)
  • 外国法人

が該当します。これらの方々は、本人確認の際には

・在留証明書、署名(サイン)証明書

・宣誓供述書、期限内のパスポートのコピー

などが必要になりますが、今回の改正法で新たに「国内連絡先登記」が必要となりました。つまり日本に不動産所有する場合は常時国内にいる代理人を立て、その代理人の承諾書・印鑑証明書を提出しなければなりません。ちなみに国内代理人は、自然人でも法人でも構わないとされています。(不動産関連業者・司法書士等が想定されます。)

住所・氏名変更登記の義務化

個人・法人ともに名義人に氏名(名称)・住所の変更が生じた場合、2026年(令和8年)4月からは「住所・氏名変更登記」が義務化されることになりました。変更日から2年以内に変更登記申請を行う必要があります。

マイホーム購入の場面でよくあるのが、住宅ローン実行を現住所で行うか、新住所で行うかという問題です。新築マンションなどで売主の提携住宅ローンを利用する場合には、物件に引越した後「新住所」で登記申請を行うので住所変更は必要ありません。一方で、非提携の住宅ローン(プロパーローン)の場合は、所有権保存登記と同日に「現住所」で登記申請を行います。この場合、引越ししてから取得した新住民票で「住所変更登記」をする必要があります。

これまでの登記法では氏名・住所の変更登記については「任意」でしたが、今後は義務化されるので必ず手続きしなくてはなりません。当然手続きには費用がかかりますが、おおむね2万円程度といわれています。内訳は登録免許税と司法書士報酬ですが、決して難しい手続きではない上に不動産1筆につき登録免許税は1000円ですので、自分自身で法務局へ申請することも可能です。

相続登記の義務化

不動産を相続した場合の登記も今回の改正で義務化されました。これからは相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

また遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料が課せられます。

なお、改正法施行の2024年4月1日以前に発生している不動産相続についても3年の猶予があります。相続登記をしないままにしている場合は、早めに登記申請をしましょう。

こうした動きも上記の「住所・氏名の変更登記」に追随する部分ですが、現在日本では「所有者不明土地」が問題視されています。所有者不明の不動産は土地開発や災害復興の妨げの一因になっており、対応を求められていました。誰のもの分からない不動産を失くすため、相続登記や住所氏名変更登記は確実に行わなければならない時代に突入しました。

運転免許証やキャッシュカードは引越ししたら住所変更するのが当たり前ですが、これからは不動産登記も変更することを覚えておきましょう。