住宅ローンの変動金利には「5年ルール」と「125%(1.25倍)ルール」が存在しています。最近、変動金利が徐々に上がりはじめ、このルールに注目が集まることが多くなってきました。「金利が上昇しても、すぐには返済金額が上がることはないので大丈夫」というものですが、本当に大丈夫なのか、落とし穴はないのか不安に思う人も多いでしょう。今回は、この2つのルールのメリット・デメリットについてお話します。
「5年ルール」「125%ルール」とは?
まずこの2つのルールが適用されるのは、「変動金利」で「元利均等返済」を選択した場合のみとなっています。
元利均等返済は毎回の返済金額が一定ですが、その内訳が当初は金利負担が多く、回数を重ねるごとに元金の占める割合が多くなっていく返済方法です。
そして「5年ルール」とは「返済金額の見直しは5年に1度しか行わない」というものです。6年目、11年目という5年を経過した時期に新しい返済額が適用されます。しかし、金利自体は「変動」しています。通常、1年に2度(多くは4月と10月)「金利の見直し」が実施されています。金利が動いていたとしても返済金額は一定で、元金と利息の割合が変動していることになります。
そして直近の5年間で金利が上昇していれば、返済金額の見直し時点で次の5年間の返済額が上昇することになります。しかし、ここで無制限に返済額が上昇することになってしまうと、ローン破綻を招く恐れがあります。そこで、新しい返済額はこれまでの返済額の1.25倍以上は上がりません、というのが「125%(1.25倍)ルール」です。これまで10万円だった返済金額は、上がったとしても12.5万円までということになります。
この2つのルールは、返済額激増にブレーキをかける措置として機能しています。
一部の銀行では「5年・125%ルール」が存在しない
変動金利であれば、どの銀行の住宅ローンを利用してもこの「5年・125%ルール」が適用されると考えていると大失敗します。実は一部の銀行では、このルールを採用していません!
現在、ソニー銀行、SBI新生銀行、PayPay銀行ではこのルールがありません。これを知らずに利用していると、毎月の金利変動がダイレクトに返済金額に影響します。申込みをする前、金銭消費貸借契約の際に、よく確認しましょう。
「5年・125%ルール」がないと本当に家計破綻する?
一部の銀行では2つのブレーキがないわけですが、本当にこのルールがないと家計破綻に追い込まれてしまうような返済金額になるのでしょうか?
どれだけ金利が上昇すると、1.25倍の返済金額になるのかをシミュレーションしてみましょう。
例)借入金額 3,000万円 返済期間35年 変動金利0.4%の場合、当初の5年間の返済金額は、76,557円となります。
次に6年目に入る時に1.25倍の返済金額95,696円に上昇したと仮定すると、金利は2.0%となります。
さらに11年目には119,597円 金利4.0%
16年目には149,456円 金利6.7%
21年目には186,820円 金利10.5%
26年目には233,525円 金利16.1%
最後の31年目に291,906円 金利26.9%
これが5年ごとに1.25倍の返済額になる金利上昇結果です。右肩上がりというよりも、Jカープを描くような上がり方です。現実的に考えると、少々起こりにくい事象とも取れます。しかも日本ではお金の貸し借りをする際に利息・遅延損害金などの上限に関する「利息制限法」という法律があります。100万円以上の元本を貸し付ける時には「年15%」の金利が上限となっています。
住宅ローンでは年15%を超える利率は存在しないということになりますが、初期の5年間での金利上昇局面では起こりうる話ですし、「5年・125%ルール」の存在が効果を発揮する可能性があります。
5年間の中での金利上昇
最初の5年間の中で金利が上がった場合には、6年目に突入するまで返済額は変わりません。直ちに影響を受けることはありません。
例えば0.4%だった金利が0.5%ずつ上昇していったと仮定すると0.9% 82,141円(+5,584円)
1.4% 87,975円(+11,418円)
1.9% 94,058円(+17,501円)
2.4% 100,387円(+23,830円)
という返済金額になります。
毎月の返済金額が5千円~1、2万円ほど増加したとしても、直ちに家計を圧迫して返済不能に陥るというレベルではありません。逆にそこまで切羽詰まった家計であれば、そもそもの借入金額を見なおす必要があるという話になります。
このように、やはり「5年・125%ルール」はある程度の安心感を与えてくれる措置ですが、支払総額は増加してしまいます。また、「5年・125%ルール」を住宅ローンを選ぶ際の絶対条件にしてしまうと、選択肢を狭めてしまうことにもなります。
金利や団信などを含め広い視野で住宅ローンを選ぶこと、そして余裕を持った資金計画にすることが重要です。