普段「社長、会社役員、経営者」という言葉をきくと、「お金持ち」だという印象を受けます。マイホームを購入する時にも「価格の高い部屋」や「広くてハイスペックな家」が買えるんだろうな・・・と羨ましく思うこともあるかもしれません。しかし、それは大企業の役員や、一部の大成功している起業家に限られた話です。実は「住宅ローン」を借りようとする際には、一般の会社員よりも経営者の方が厳しく審査されます。今回は、経営者が住宅ローンを申し込む場合の注意点をお話します。
会社員と経営者の違い
一般に会社員や公務員といった職業の人は、勤務先から「給与」という形で収入を得ています。その勤務先に在籍する限りは、毎月決まった収入を得ることができます。一方で経営者の場合は、同じく「給与」や「役員報酬」という名目で収入を得ている場合が多いですが、会社の業績に左右されてしまう現実があります。特に大企業に比べると中小企業の経営環境は厳しく、売り上げも不安定です。年収が一般会社員の何倍もあっても、民間金融機関の住宅ローン審査に落ちてしまうことも珍しくありません。
審査で提出する書類の違い
住宅ローンの審査には「事前審査」と「本申込」の2段階があります。
一般会社員であれば、事前審査の時には最新の源泉徴収票があれば簡単に審査を進めることができます。一方経営者となると、確定申告をしている場合には3期分の写しが必要です。さらに会社の『決算書3期分』の提出が必須となります。(中には2期分で足りる金融機関もあります。)
3期分の決算書の中に1期でも赤字があると「否決」とする金融機関もあります。直近1~2年の業績が良くても3年前が不振だった場合には注意が必要です。また、数年のうちにあまりにも業績の振り幅が大きい場合なども「安定していない」と受け取られることがあります。
業績が自身の収入にも大きな影響を与える経営者の場合には、残念ながらこうした現実が突き付けられます。
しかも決算書は一度提出てしまうと、審査に落ちたとしても返却してもらえません。会社の内情を取引先でない金融機関に知られてしまうのを嫌がる方も多くいらっしゃいますが、これを出さないと全く審査が進みません。
経営者の場合には、こうした膨大な書類を事前審査の段階から準備しておく必要があります。
審査基準にも差がある?
住宅ローンの審査においては「返済負担率」(返済比率)という数字をクリアしなければなりません。
この基準も金融機関によって差がありますが、年収の区分によって30%以内、35%以内、40%以内などと定められています。この返済負担率が一般の給与所得者(会社員など)と経営者では大きく違うと言われています。はっきりと審査基準を公にしていない金融機関もありますが、一般会社員の返済負担率と比べて5%~10%低く設定されていると考えましょう。つまり同じ年収700万円の会社員と経営者とでは、35%以内と25%以内となります。例えば審査金利3.5%で35年返済の場合、会社員では4,940万円、経営者では3,520万円が限度額となります。同じ年収でも、借り入れ可能な金額に1,420万円もの差が生まれるのです。同じ価格のマンションを購入しようとした際には、経営者は自己資金(頭金)を多く準備しておかなければなりません。
金融機関の中には、上記の返済負担率の範囲内であれば頭金がなくても融資可能とする場合もあれば、経営者は一律で〇割の自己資金が必要とする場合に分かれます。事前審査を申し込む前に、審査基準について確認をしておきましょう。
親が経営する会社で働いている場合は?
現在はあなたが経営者(代表権のある取締役など)でなく、親や親族が経営する企業で働いている場合はどうでしょうか。実は、こうしたケースは「同族企業に勤務」していると判断され、経営者と同じ厳しめの審査基準となることを知っておきましょう。今は一会社員という立場でも、将来的には役員に昇進したり、社長業を継ぐことになる可能性が大きいからです。
経営者が通りやすい住宅ローンとは?
経営者の方が少しでも良い条件で住宅ローンを借りるにはどうしたら良いでしょうか。まずは、経営する会社と取引のある金融機関に話をするのが良いでしょう。経営する企業のメインバンクであれば経営状態や財務状況を把握しているので、話が通りやすいメリットがあります。書類の提出は不可欠かもしれませんが、まずはメインバンクに相談してみましょう。
次に住宅金融支援機構のフラット35があります。実は、フラット35では会社員だろうと経営者だろうと上記の返済負担率の区分が同じです。年収400万円未満は30%以内、400万円以上は35%以内と一律なのです。また審査金利も毎月の実効金利で現状は1%台なので、民間金融機関よりも借り入れ可能な金額が大きくなります。
経営者の住宅ローンは少しハードルが高くはなりますが、さまざまな方法があります。書類の準備を万端にして挑みましょう。