安くても「旧耐震」物件を買うのはリスク高!デメリットをしっかり知っておこう

不動産コラム

中古マンションを購入して、自分の好みにリフォームやリノベーションをしたいと考えている方は、「築年数」をチェックしているでしょうか?中古物件には、いわゆる「旧耐震」「新耐震」という区別があります。安さだけに惹かれて購入してしまうと、いろんな制限に囚われて思い通りのマイホームにならない可能性があります。

今回は、築古旧耐震物件のデメリットについて解説します。

「旧耐震」「新耐震」の区別とは

日本の建築基準法では、建築物には一定以上の耐震性を持たせる基準が設けられています。地震大国であるわが国では、この基準をクリアしないと新しく建築ができません。そしてこの耐震性の基準も、大きな地震が起こると少しずつ改正され、1978年の宮城県沖地震をきっかけに1981年大改正が行われました。そこで1981年6月以降の耐震基準を「新耐震基準」、1981年5月以前のものを「旧耐震」と呼び、大きく区別するようになったのです。

「旧耐震」では「震度5程度の地震でほとんど損傷しない」という基準が、「新耐震」では「震度6以上の地震でも倒壊の恐れがない」までグレードアップしています。

2024年1月1日に起こった石川県の能登半島地震で倒壊したビルも、旧耐震の物件でした。実は政府としても出来るだけ国民が旧耐震物件に住むことは避けるべく、物件購入時に新耐震物件の方が何かと優遇されるような制度を設けているのです。

「旧耐震」の物件には、耐震性能が低いこと以外にどんなデメリットがあるのかを見てみましょう。

①住宅ローン控除の対象外

住宅ローン控除は、マイホーム購入時に住宅ローンを借入する人だけに適用される大きな減税です。近年では金額や控除率などが縮小傾向にあり、そもそも省エネ住宅でないと恩恵を受けられなくなってきました。

そしてまず以下の条件をクリアすることが大前提となっています。

・1982年1月1日以降に建築された住宅であること

・現行の耐震基準に適合していること

つまり、「旧耐震」の物件では原則適用外となっているのです。

(「耐震基準適合証明書」を取得し、原稿の耐震基準並みであることが証明できれば、利用できます。)

②住宅ローン審査のハードルが高い

何よりも住宅ローンの借り入れがしにくいのが最大のネックと言えます。多くの金融機関では、どんなに立地が良くても「旧耐震」であれば融資対象外としています。まずは融資可能な金融機関を探すだけでも苦労します。

また、融資可能だとしても物件の担保評価を低く判定されるので、融資金額が低くなってしまうのもデメリットです。

③贈与税の非課税制度が対象外

マイホーム購入時に、両親や祖父母から資金援助を受けた際、既存住宅の場合は500万円までが非課税となる制度があります。住宅ローン控除と同様この非課税枠にも適用条件があり、「旧耐震」の物件では原則対象外となります。

④不動産取得税・登録免許税の優遇がない

不動産取得税は、マイホームを購入した時に1度だけ課税される税金です。本来、不動産取得税の税率は3%となっていますが、ほとんどの不動産では減免措置が取られているため低く抑えられています。しかし、「旧耐震」の物件では耐震基準適合証明書を提出できないと、本来の3%が課税されることになります。

また登記をする際の登録免許税の軽減措置も対象外です。

所有権の移転登記…建物価額の0.3%(本則は2%)

抵当権の設定登記…債権金額の0.1%(本則は0.4%)

不動産取得税と同様、耐震基準適合証明書を提出できないと本則の税率となります。諸費用で必要となる登記費用が、若干嵩むことになります。

⑤売却しにくい

これまでのデメリットを総合すると、旧耐震の物件は非常に売却のハードルが高いことが分かります。数年済んだ後に売却を考えている場合、買い手はほとんどいないと言っていいでしょう。どんなに立地が良くても、リセールは不可能だと考えましょう。

それでも「旧耐震」物件の魅力は、価格の安さです。そもそも安くしないと売却できないわけですから、立地が良くて、広い物件を格安で手に入れることは可能ではあります。

どうしてもこの場所に住みたい場合、家族の人数が多くて広い部屋が必要だが予算が限られている場合などには築古物件が適しています。将来の売却は考えず、生涯住む覚悟が必要です。とはいえ家屋の倒壊で命の危険に晒されるリスクは避けなくてはなりません。耐震性についてもリノベーション工事で補強できるかをしっかり検討し、デメリットをしっかり理解した上で決断しましょう。