マンション購入を考えている方の中には「騒音問題」が気になる方のいらっしゃると思います。共同住宅であるマンションでは、上下階にも他の家族が暮らしているため、生活音が聞こえてしまうのは構造上避けられませんが、大きなトラブルに発展することは避けたいものです。
今回はマンションの騒音トラブルの原因とその対処法としてΔL等級(デルタ・エル等級)についてご説明いたします。
生活音が聞こえる仕組み
まず、生活音がどうやって伝わってくるのかその「仕組み」を知っておきましょう。
音の伝わり方には2種類あります。
1.空気伝播音
話し声、テレビの音、楽器の音など、空気を伝わって聞こえてくる音を空気伝播音といいます。
空気伝播音に関しては、壁の厚さによって随分緩和できます。戸境壁(隣の住戸との境の壁)のコンクリート厚が何センチあるかは、パンフレット等で確認できます。また幹線道路沿いなどのマンションでは、窓のサッシも防音性能が高いものを採用されていることがあります。空気伝播音はマンションの構造の工夫で、かなり防ぐことが出来きます。また、原因である空気を遮断することは防音の第一歩です。窓を開けっ放しにして大音量を流すといった行為は控えましょう。
2.個体伝播音
子供が走る足音、椅子を引きずる音など、床や壁(物体)を振動させて音として伝わってくるものを個体伝播音といいます。
軽いものが落下したときに発生する音、例えば掃除機をかける時、スプーンなどを落とした時の「ゴロゴロ・・・」「カツーン」という聞こえ方をするものを「軽量床衝撃音」と呼びます。
一方、重たいものが落下した時などに発生する振動を伴う音を「重量床衝撃音」と呼びます。バーベルなどを落とした時の「ゴツン!」、子供が椅子の上から飛び降りた時の「ドスン!」という聞こえ方をする音です。
代表的なマンションの騒音トラブル
実際にマンションで生活している中での騒音トラブルには、次のようなものが挙げられます。
- 話し声、子供が走り回る足音、椅子を引く音、物を落とす音といった生活音
- 掃除機や洗濯機、食洗機などの家電から生じる音
- 目覚ましのアラーム音、床に置いた携帯電話のバイブレーション音
- テレビやオーディオからの機械の音
- ピアノやギターなどの楽器演奏の音
- ペットの鳴き声
- 浴室やトイレの排水音
- ドアを乱暴に開け閉めする音
これらの音は生活をする上で必ず生じてしまう音ですし、人によって聞こえ方・感じ方も違うため一律の基準値は設けにくいのが現実です。
しかし、同じ音量であっても深夜早朝と昼間では明らかに聞こえ方は違います。深夜に洗濯機を回したり、夜明けから掃除機をかければ周囲にストレスを与えてしまうことは容易に想像できます。また、小さな子供がいる家庭では気にならない音や声も、一人暮らしや老夫婦など家族構成が違う家庭では騒音だと感じられるケースもあります。
騒音問題が発生したときの対処法
万が一、騒音問題が発生したときは、どのように対処すれば良いのでしょうか。当然、こちらが被害者になる場合もありますが、加害者とみなされる場合もあり得ます。それぞれ対処法が異なりますので、詳しく見ていきましょう。
被害者になった場合、直接苦情を伝えるというのはかえってご近所トラブルに発展する場合もあるため、まずは管理組合や管理会社へ相談するのがおすすめです。
第一段階の対応としては「〇〇号室の方」と明確にせず、掲示板への張り紙や回覧板で「深夜の話し声に気をつけましょう」といった穏便な注意喚起が行われます。この段階で騒音がなくなれば問題ありませんが、以降も続くようであればさらに踏み込んだ注意喚起をしてもらうよう要請します。
あまりに酷い場合には騒音の「日にち、時間、騒音の種類、内容」、騒音計で音量を測定するなど具体的な記録を残しておくのも一つです。
騒音の原因が特定できており、お互いよく知る入居者同士であれば当事者間だけの話し合いで解決できるケースもありますが、出来れば管理会社など第三者を交えた方が感情的にならずに済みます。
加害者と見做された場合は、どのような対策があるでしょうか。大きなトラブルに発展させないためにも、簡単にできることがいくつかありますのでご紹介いたします。近隣住戸へのちょっとした配慮が騒音問題を解決する鍵となります。
- 子供に靴下を履かせる
- クッションマットを敷く
- ラグやカーペットを敷く
- スリッパを履く
- 椅子の足にカバーや吸音材を付ける
- ペットに無駄吠えをしないよう躾をする
- 楽器の演奏中は窓を閉め、管理規約で決められた時間を守る
- テレビやオーディを機器を壁や床から離して設置する
特に、フローリングにラグ、カーペット、クッションマットなどを敷くことは、「重量床衝撃音」にも効果的です。
ΔL等級(デルタ・エル等級)の高いマンションを選びましょう!
「軽量床衝撃音」や「重量床衝撃音」などの個体伝播音は、その性質上、100%防ぐことが難しい種類の音と言われています。しかしながら、フローリングの遮音性能が高ければ、大幅に軽減されることも、また事実です。
新築マンションのパンフレットなどで、「L−40」や「L−45」といった単位を見たことはありませんか?これはフローリングの遮音等級の表しており、数値が低いほど遮音性能が高くなります。「L−45」よりも音が聞こえにくいのは「L−40」といった具合です。
2008年以降は新しい表示方式が採用され、「ΔL等級(デルタ・エル等級)」という単位になりました。これは、床材の床衝撃音低減性能の高低を等級として表記するもので、軽量床衝撃音レベル低減量についてはΔLL等級(ΔLL-1~5の5段階)、重量床衝撃音レベル低減量についてはΔLH等級(ΔLH-1~4の4段階)が、設定されており、両等級とも等級の数字が大きいほど床衝撃音低減性能が高いことを表します。
騒音トラブルは心身の健康に影響を及ぼすこともあり、裁判に発展するケースもあります。またこちらが加害者の立場になることが無いとも言えません。大きなトラブルを避ける意味でも、マンションを検討する際には「ΔL等級(デルタ・エル等級)」を確認し、出来るだけ性能の良い物件を選びましょう。