「一体、自分はいくら住宅ローンを借りられるのだろう?」
マイホーム購入を検討している人の多くが悩むのが、住宅ローンの借入額です。不動産価格が値上がりしている昨今、「借りられるだけ借りたい」「最大限借入したい」という声もよく聞きます。「年収の〇倍まで」という言葉もありますが、適正な借入額とはどう考えたらよいのでしょうか。
「年収の〇倍」まではあくまでも目安
住宅ローンの借入額を考える時、おおまかな目安として「年収の〇倍まで」という基準があるのは事実です。5倍や8倍、あまり一般的ではありませんが最大10倍までという説も。
例えば年収600万円の会社員であれば、5倍だと3,000万円、8倍だと4,800万円、10倍だと6,000万円です。借入額がアップすれば、それだけ購入する不動産の選択肢も広がります。マンションであれば、より専有面積が広く、間取りも部屋数が多いものを購入できます。タワーマンションなどの超高層建物では、より高層階で眺望や日当たりの良い部屋を選ぶことが可能になります。
ではこの「何倍」という基準にはどういった計算根拠があるのでしょうか。
返済負担率の考え方
返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のことで、多くの金融機関が審査基準として用いています。金融機関は返済できないような金額を貸し付けることはしないので、きちんとした基準を設けています。一般的には以下のような制限があります。
・年収400万円未満の場合: 返済負担率30~35%以内
・年収400万円以上の場合: 返済負担率35~40%以内
年収600万円で返済負担率35%の場合
600万円×0.35=210万円
月額では 210万円÷12=17.5万円
1か月にこの人が支払える最大限のローン返済額が、17.5万円ということになります。
返済期間や金利を考慮した返済可能額
住宅ローンは長期間にわたって返済するローンで、当然金利の負担があります。返済可能額を計算する際にも、「返済期間」と「金利」が大きく関わってきます。
35年返済と20年返済では、同じ金額を借入しても35年返済の方が月々の返済額は安くなります。したがって、600万円の年収の人が35年返済で借入する場合と20年返済で借入する場合とでは、借入限度額は35年返済の方が大きくなります。
また、金融機関では独自に「審査金利」という基準を持っています。ご存知の通り変動金利は現在も低水準をキープしており、適用金利は軒並み1%を切っています。そのため、実際に返済する時に適用になる金利ではなく、3%~4%といった高めの金利で審査をします。変動金利は経済情勢によっては上昇する可能性があるので、高めの水準で審査しておかないと返済不能に陥る利用者が続出してしまうからです。
では年収600万円の人の例で、35年返済審査金利3.5%の金融機関でいくら借りられるかを計算してみましょう。返済方法は元利均等方式(ボーナス払いなし)の場合、4,234万円となります。このケースだと、年収の約7倍という結果になります。年収の5倍から7倍に抑えるのが適正と言われるのは、こうした計算根拠によるものです。
(4,234万円借り入れると、月々の返済額は174,987 円で、上記の17.5万円に合致します。ですが、これは審査金利での返済金額となりますので、実際の返済額はもっと少なくなります。例えば変動金利0.425%が適用されたとすると、108,510 円になります。)
返済可能額は世帯によって異なる
住宅ローンの借入可能額を年収の「〇倍」で計算しても、単身者、夫婦のみの世帯、子供のいる世帯、では家計の収支が違います。特に子供がいる世帯では、返済負担率を35%ではなく、25%~30%程度に抑えるのが無理のない計画です。
また賃貸住宅で家賃を支払っている人にとっては、「今の家賃と同水準の支払額」というのが返済額の目安になるでしょう。ただし、購入するのが分譲マンションの場合には「管理費・修繕積立金」という毎月のランニングコストも加味しなくてはなりません。「毎月の住宅ローンの返済額+管理費・修繕積立金」の合計額が、支払い可能かどうかを吟味しましょう。
さらに、修繕積立金は一定金額ではありません。多くの物件では修繕積立金に「段階増額方式」を採用しています。入居当時には安い金額に抑え、一定期間(5年ごとなど)が経過すると段階的に増額する予定になっています。「上がっていくものだ」という認識でいないと、将来予期せぬ増額に家計が追い付かない事態になってしまいます。
「年収の〇倍」という基準はあくまでも目安です。借入れする人、ひとりひとりできちんと計画する必要があります。借りられる金額と返せる金額にも差があることを念頭に、無理のない返済計画を立てましょう。