住宅ローン控除引下げへ⁈マイホーム購入への影響は−令和4年度税制改正の展望−

不動産コラム

先日「政府は、来年度(令和4年度)の税制改正での住宅ローン控除引き下げを検討」というニュースが飛び込んできました。これまでも徐々に縮小されていく方向性は噂になっていましたが、「控除の対象が1%から0.7%へ」と具体的な数字も報道されました。

これからマイホーム購入を考えている人にとっては、大きな影響が出てきそうです。今回は住宅ローン控除の今後の展望についてお話しします。

住宅ローン控除の仕組み

住宅ローン控除は、マイホーム購入を後押しする景気対策の目玉として長らく重宝されてきました。現在は住宅ローンの年末残高の1%を所得税または住民税から控除してくれます。対象となる最高額は4000万円、10年間(一部13年間対象となる方がいます)続きますので最高で400万円税金がお得になるという制度です。

対象となる住宅の登記床面積は50平米以上あること、その年の所得金額が3000万円以下であることなどの条件もあります。(床面積が40平米以上に緩和されたケースでは、所得金額は1000万円以下と厳しくなります。)

この税制優遇があるからこそ、マイホーム購入を積極的に薦めた人は多くいます。ただし、勘違いしてはならないのは「自分が収めた税金が戻ってくる(還付金)だけで、貰えるお金(給付金)ではない」ということです。ローン控除の原資は、あなた自身が収めた税金(もしくはこれから納める住民税)となります。

政府が問題視している「逆ざや」とは?

景気が大きく回復したわけでもなく、またコロナ禍による新たな不安が解消されない中、どうして「住宅ローン控除引下げ」の話が出てきたのでしょうか。

これは長年続いている住宅ローンの低金利が関係しています。変動金利や10年固定金利は0.5%前後と1%を大きく割り込んでいます。また、全期間固定のフラット35でさえも1.3%前後で推移しています。

例えば5000万円を年利0.6%の変動金利で借りた場合、1年間の利息は約30万円となります。ところが住宅ローン控除の対象となるのは年末残高の1%、つまり限度額いっぱいの40万円です。負担する金利よりも戻ってくる税金の方が多くなる、これが「逆ざや」と呼ばれる現象です。

これによって、現金があるにも関わらず住宅ローンを借入をしたり、還付金を見込んで借入金額を増やす人がたくさん現れました。こうした不公平感にいよいよメスが入ったということになります。(一見すると「お得」とも取れる現象ですが、借入をするためにはその分余計な諸費用(抵当権設定登記費用や銀行へ支払う手数料など)がかかります。それを支払ってでも控除を取るかどうかは検証が必要です。)

かつて平成20年頃の制度では、控除率は0.6%最大でも年間12万円しか戻ってきませんでした。当時の金利は0.9%程度でしたので現在のような逆ざや現象は起きていませんでした。時代とともに制度は変更を重ねてきたのですが、元々は「事前立法」と呼ばれる部類の税制優遇ですので永遠に続くものではないことは知っておきましょう。

1% →0.7%へ引き下げが実現するとどうなる?

現在、引き下げ案として有力なのが「0.7%」という数字です。

限度額や期間については現状維持か、はたまた延期か詳細は決まっていないようです。

単純に控除額だけを比較すると、

4000万円×1%=40万円

4000万円×0.7%=28万円

12万円の減少となります。現状と同じ10年間であれば120万円縮小されることになります。

もしも「1%もしくは実際の借入利率の低い方」という制度改正であれば、また話が違ってきます。この案では前述の逆ざや現象は起きにくくなりますので、現実味があります。

このパターンでは出来るだけ低金利の住宅ローンを探しつつ、団体信用生命保険の保障を充実させて金利を1%に近づける方法が有効です。がん保障付や3大疾病保障付の団信では、プラス0.1%~0.3%金利が上乗せされます。住宅ローンの金利との合算で1%になるよう組み合わせれば、最大限の控除を受けることが可能になります。

実際、マイホーム購入をして住宅ローン控除を利用しているの中には「将来の繰上げ返済のための貯蓄に回している」「還付されたお金で固定資産税を支払っている」こういう人が多くいます。

「当てにしていたものがなくなった」と感じると思いますが、より一層シビアに資金計画を立て直す必要があります。

これからマイホーム購入を検討している人にとっては少々耳の痛いニュースですが、12月には来年度の税制改正大綱が発表となります。引き下げ率だけでなく制度の全体像がわかりましたらまた解説したいと思います。