みずほ銀行は、第一生命保険株式会社が提供するペアローン利用者向け連生団体信用生命保険(以下「ペアローン団信」)の取り扱いを2024年7月1日より開始することを発表しました。ペアローンで連生団信に加入できる住宅ローンは、大手銀行初となります。住宅ローン金利が横並びで競争が激化する中、これからは「団信」の内容が選択肢の一つとなりそうです。
ペアローンの利用率
住宅ローンの借り方にはいくつかのパターンがあります。1人の契約名義人が「単独」で借り入れる方法がもっともポピュラーですが、共働き世帯ではそれぞれが借り入れ名義人(債務者)となり、2本の住宅ローンを組むことが可能です。これが「ペアローン」です。夫婦二人ともが正社員でしっかり年収がある場合には、それぞれ住宅ローン控除を受けられるのが大きなメリットです。また借入総額もアップするので、より条件のよい住宅の購入が可能となります。
「収入合算」と大きく違うのは住宅ローンの契約の本数で、「収入合算」ではローンは1本です。夫婦二人の年収を合算することでより借入れ金額を増やすことが可能です。合算者は「連帯保証人」となるケースが一般的で、債務者ではないため住宅ローン控除の対象外です。
実際にペアローンの利用率はどのくらいかというと、全体では約1割だと言われています。しかし年代別に見てみると20代30代では倍の2割、5人に1人が利用していることになります。
ペアローンのデメリット
ペアローンを組む若い世帯では、「子育て」や「転職」といったライフイベントなどの発生時にパートナーの収入が大きく減少した場合でもローン返済を継続できるかどうかがポイントです。2馬力を継続できるかという課題とともに、もう一つ大きなデメリットが「団体信用生命保険」でした。
ペアローンは住宅ローンが2本なので、それぞれの契約で名義人である夫と妻が別々の団体信用生命保険に加入します。例えば夫が3000万円、妻が2000万円の借入をしている家庭で、夫に万が一のことがあった場合。夫の3000万円のローンについてはその時点での残債が全額保険で弁済されます。つまりローン残高が0円となります。しかし、妻の2000万円のローンについては当然ながら返済は継続して行う必要があります。妻が仕事を継続するかぎり収入が途絶えることはありませんが、2馬力が1馬力となるため残された家族の生活資金はかなり減ることになります。妻の年収で返済可能な借り入れをしていると言っても、厳しいのが現状です。子どもがいる場合にはなおさらです。
このようにペアローンの従来の団体信用生命保険は、あくまで単独の借入者に対するもので、ともに借入れを行うパートナーへの保障が不十分であるという課題がありました。新しい「ペアローン団信」は、このような時代のニーズに応えるものです。
みずほ銀行「ペアローン団信」は2種類
みずほ銀行が今回発表した「ペアローン団信」には2つの種類があります。
一つ目は「がん保障特約付き団信によるペア」で、死亡または所定の高度障害状態・所定のガンと診断・余命6か月以内と診断された場合に残債が0円となります。ただし、この保険に加入できる人は「二人ともローン実行時に満51歳未満」であることが条件です。そしてそれぞれのローンの借入金利に「0.2%」上乗せされます。(上乗せされた金利分が保険料です。)
ここで大きなネックとなるのが年齢制限です。実行時年齢が夫婦二人ともに51歳未満ですので、期限に近い年齢の人は要注意です。ローンの申し込み時にはクリアしていても、引き渡しまでに期間がある新築物件などでは誕生日が来てしまうことがあります。物件の引き渡しスケジュールをよく確認しましょう。
年齢制限に引っかかってしまう方はもうひとつの「一般団信によるペア」の利用となります。こちらはペアとなる二人ともが実行時満71歳未満であること(ローンの申し込み要件と同じ)が条件です。ガン特約は付いていないので、死亡まだは所定の高度障害状態が保障内容となります。同じく、金利は0.2%上乗せです。
団信だけを見ても、やはり若いうちに住宅ローンを借入した方がより条件が良く、選択肢が広がりますね。
ペアローン団信の注意点
ペアローン団信では、これまでの課題であったもう片方の残債の問題を解決してくれます。パートナーに万が一のことがあった場合には、2つの住宅ローン両方の残債が0円となり、以降返済の必要ななくなるのです。
ただし注意点がひとつあります。このペアローン団信では、いずれか1人に支払事由が生じ、両者の債務が完済された場合、支払事由に該当していない方の被保険者の免除された債務が一時所得となり所得税の課税対象となってしまいます。「1500万円の残債が0になったのであれば、1500万円の一時所得があった」と見なされるということになります。
(おそらく確定申告することになると思われますが、詳細は税理士や税務署等へ問い合わせが必要です。)
ペアローンを検討中の方は、ぜひペアローン団信を知っておきましょう。今後、みずほ銀行に追随する大手銀行が出てくるかも、要注目です。