マイホームの契約を無事に済ませた後でも、まだまだ安心はできません。住宅ローンを借入する資金計画の場合、もしもローン審査が通らなかった時には代金の支払いが出来ません。そこで不動産の売買契約では買主が住宅ローンの審査に通らなかった場合、契約を解除できる「ローン特約」を定めることができます。
「ローン特約」とは
マイホームは一生に一度の大きな買い物です。地域や物件によって差はあるものの、数千万円という高額な取引です。現金一括で購入するケースは少なく、ほとんどの人が公的機関や民間金融機関から融資を受けています。ですが実際に融資申し込み手続きを行うのは、売買契約を締結した後になります。
審査がすんなり通過すれば問題ありませんが、希望する金額の融資が受けられない、もしくは審査に落ちてしまう可能性もゼロではありません。もし住宅ローン審査に落ちたとしても買主の残代金支払い義務までも消滅するわけではなく、売買契約は無効となりません。残代金の支払い義務は継続しているのです。そうなると買主が売買契約を解除するには、すでに支払い済みの手付金を放棄するしかありません。
マイホームも手に入らない上にすでに支払った手付金も放棄するとなると、買主にとっては非常に痛手となります。こうしたリスクを回避するために設けられたのが「ローン特約」です。
「ローン特約」(「融資特約」「融資利用の特則」とも呼ばれます)は、「買主が住宅ローンを利用して物件を購入する場合、ローン審査に通らなかった時には無条件で契約を解除することができる」オプションです。ローン特約が適用となった際には「支払済みの手付金は無利息で返還される」ことになっているので、マイホームの購入は出来なくても余計な出費を抑えることはできるのです。
提携住宅ローンには「ローン特約」が必須
予め不動産会社が特定の金融機関と「提携住宅ローン」を準備していることがあります。買主がこの提携住宅ローンを利用する場合には、不動産会社は重要事項説明の中にある「金銭貸借のあっせん」の項目に記載と説明をすること、そして「ローン特約」を付けることが義務付けられます。
一方、「提携住宅ローン」を利用せず自身の取引銀行から融資を受ける場合には非提携扱いとなるので、基本的にローン特約の対象外となります。希望すればローン特約を付けてもらえるケースもありますが、不動産会社にとっては義務ではないので利用する銀行選びは慎重に行いましょう。
「ローン特約」は2種類ある
一口に「ローン特約」と言っても、「解除条件型」そして「解除権留保型」の2種類があることをご存知でしょうか。それぞれ契約解除に至る条件に違いがあるので、きちんと理解していないとトラブルに発展してしまいます。
①「解除条件型」
当初定めた期限までに住宅ローン審査で承認を得られなかった場合、「自動的に」売買契約が解除されます。このケースでは買主から売主に意思表示をする必要はありません。条件を満たした時点で特約が適用となり、必然的に契約は無効となります。
ただ、当初利用予定の住宅ローンが通らなかった時、別の金融機関で再度審査を受ける人がほとんどです。多少金利などの条件が悪くなったとしても、マイホーム購入を諦めたくなければ別の方法を探すしかありません。しかし別の金融機関で審査を進めている間に特約期限が到来してしまうと、契約解除となってしまいます。
他の金融機関の審査結果を待ちたい場合には、必ず「売買契約変更合意書」を交わす必要があります。期日が到来する前に売主に申し出て、期限の延長について合意しておきましょう。
②「解除権留保型」
当初定めた期限までに住宅ローン審査で承認を得られなかった場合でも自動的に売買契約が解除されません。予め定めた期日までに買主から売主に「契約を解除したい」と意思表示した場合にのみ、ローン特約が適用されます。買主に一時的に「解除権」が発生するのですが、期日を一日でも過ぎるとこの解除権は消滅します。
複数の金融機関で審査をしたい場合には、「解除権留保型」にしておく方が得策です。ただし期日が過ぎると、手付金も返還されず場合によっては違約金が発生してしまうケースもあります。複数の金融機関に打診している間に期限が到来しそうであれば、予め売主に申し出て「解除権を履行できる期日の延長」をしておきましょう。
トラブルを避けるためには
「ローン特約」はどちらかと言えば買主保護を目的としたものです。しかし売主側の立場で考えると、せっかく売買契約を結んだのにまた別の買主を探さなくてはなりません。売主が住み替えを行う場合には、よりスケジュールがタイトになることもあります。できるだけスムーズに契約を履行できるよう、買主には「誠実に融資申請手続きを進めること」が義務付けられています。売買契約後のトラブルを少しでも避けるためには、出来れば事前審査を行い、どの金融機関であればどのくらいの融資が可能であるかを知っておきましょう。
最後にローン特約を付ける場合には、適用条件や申請期間、通達方法などを明確に記載しておき、売主、不動産会社や仲介会社と連絡を怠らないように気を付けましょう。