「タワマン節税」がついに終焉?2024年(R6年)から相続税の計算方法が変わる!

不動産コラム

以前から相続税対策として現金を不動産に換える方法はよく使われてきました。1億の現金は額面通り1億円の価値がありますが、1億円で購入したマンションは額面よりも低い相続税評価額で算定されるためです。特にタワーマンションを活用した節税策は、高層階の評価が相対的に低いため、相続税の負担をより軽減できるとして広く利用されてきました。ところが令和6年(2024年)の相続税改正で、いわゆる「タワマン節税」を終焉させる大きな変更が加わりました。詳しく見てみましょう。

改正の背景と目的

「タワマン節税」と言われているからくりは、まず土地の固定資産税評価額が低くなることです。土地については区分所有者の持ち分割合によって按分して算出するため、戸建てに比べると一住戸あたりの評価額よりも断然低くなります。

またこれまでは階数に関係なく固定資産税評価額が一律であったため、高層階の住戸ではより高額な資産を低評価で相続することができました。戸数が多い上に超高層建物のタワーマンションでは、より節税効果が高くなるのです。

こうした節税方法は決して違法ではありませんでしたが、市場価値と評価額の乖離をいかに埋めるかが課題となっていました。過去にはこの手法で大幅な節税を行った人が最高裁で敗訴した判例もありました。このケースでは計画的に租税回避行為を露骨に行ったことも原因でしたが、納税者が個別に判断することが求められるようになることも問題視されていました。

大原則となる「税制の公平性」を確保するためには、実際の市場価値に基づく適正な評価を行う必要があり、ついにタワマン節税にメスが入ることになったのです。

タワマン相続税の改正点

令和6年の税制改正で変更された相続税評価額の算出方法は以下の通りです。

現行の相続税評価額 × 評価乖離率(補正率) × 0.6

評価乖離率は「①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220」により計算したものです。

  • 築年数
  • 「総階数指数」として、当該マンションの「総階数÷33(1.0を超える場合は1.0)」
  • 所在階
  • 「敷地持分狭小度」として「敷地利用権の面積÷専有面積」

この計算式は覚える必要はありませんが、

  • 築年数が新しいほど評価額が大きくなる
  • 総階数が高いほど評価額が大きくなる
  • 所在階が高いほど評価額が大きくなる
  • 敷地権割合が小さいほど評価額が大きくなる

という結果となります。

この計算を簡単にできるExcelシートが国税庁のHPにありますので、気になる方は是非参照してください。

B2-6 居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書|国税庁

居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書(令和6年1月1日以降用)【計算ツール】(Excelファイル/25KB)をダウンロード

新しい計算式では、まず評価額を適正な金額に補正してから、6割にします。なぜ6割かというと、一戸建ての相続税評価額に合わせた形をとったからです。

実際にいくつか例を見てみましょう。

例1)

築年数:2年

総階数:25階

所在階数:10階

専有面積:72.88㎡

敷地面積(持ち分):16.87㎡

従来の評価額:24,992,532円

このマンションでの乖離率は「3.238」となり、新しい評価額は48,555,491円となります。従来の評価額からの増加率は194.2%となり、実税価格は1億2千万円なので、実勢価格からの圧縮率は59.6%です。

例2)

築年数:13年

総階数:29階

所在階数:12階

専有面積:55.79㎡

敷地面積(持ち分):9.33㎡

従来の評価額:23,222,755円

このマンションでの乖離率は「3.016」となり、新しい評価額は42,023,897円となります。従来の評価額からの増加率は180.9%となり、実税価格は1億円なので、実勢価格からの圧縮率は58.0%です。

このように新しい計算式では、実勢価格の6割近くになる結果となりました。

今後のタワーマンション動向は?

新しい相続税評価の計算式は、2024年(令和6年)1月以降2024年1月以降に相続、遺贈または贈与で取得した分について適用されます。したがって相続時の節税目的でタワーマンションの購入を検討している、または所有している人は、2024年以降には期待していたほど節税効果が出ない可能性があります。

また適用となるのは、あくまで居住用の1室マンションです。事業用のテナントや1棟所有の賃貸マンションなどは、これまで通りの相続税評価を行います。

相続など関係なく、居住用として購入しようとする人にとってはこの改正は直接影響しません。しかしながら、節税目的で購入しようとしていた人たちが買い控えするようになると、最近の売買価格高騰が落ち着くかもしれないので、その点ではプラスに働くことになります。

今回の改正である程度実施価格とのギャップが埋められることになりましたが、不動産での相続税対策が全く出来ないわけではありません。相続税対策として有効かは、税理士としっかり相談して行いましょう。