50代からのマイホーム購入 住宅ローンで気を付けることは?

不動産コラム

近年では晩婚化が進み、50代で初めてマイホームを購入する人が増加傾向にあると言われています。あるいはずっと転勤族で定住することができず、定年前になってようやく落ち着けるという人も一定数いるでしょう。若い世代と同様、50代でも住宅ローンを借入することはできるのでしょうか。答えはもちろん「できる」なのですが、知っておくべき注意点があります。

借入期間が短くなる

まず一つ目は、借入期間が短くなることです。通常であれば最長35年(商品によっては40年や50年のローンもあります)借入できるところ、完済年齢までの年数が短くなる50代は条件が悪くなります。一般的には80歳までに完済することが条件となっており、単純計算で「80―借入時年齢」となります。一つ年齢が上がるごとに1年ずつ短縮されていくことになります。「35年の借り入れができるのは45歳まで」という基準を覚えておきましょう。

そして借入期間が短くなるということは、同じ金利でも返済金額が高くなってしまいます。例えば3000万円を1%の金利で借入れした場合(ボーナス払いなし)、35年返済では84,685円ですが、25年返済では113,061円です。月々の返済額の差は28,376円、年間では340,512円にもなります。定年後も同じ返済額を支払い続けらるかが課題となります。

定年まであと何年?

ある程度の年収があれば、銀行の審査を通過することは可能です。ただし、銀行は「定年まであと何年残っているか」という点について非常にシビアに審査します。定年を迎えた後は同じような年収を得ることは難しいので、資金計画は慎重に行うべきです。頭金を多めに準備しているか、預貯金が十分にあるか、他に不動産などの資産を持っているか、など細かく聞いてくる場合もあります。それらを証明するための書類(エビデンス)の提出を求められることもあります。

特に現在役職があり、年収1,000万円超の人は注意が必要です。50代半ばになれば役職定年となるケースも多く、年収が大幅にダウンしてしまう可能性があります。借り入れ時点では返済に余裕があっても、将来的に同じ条件で返済し続けることが本当に可能か、途中で破綻してしまうことがないかを慎重に判断しましょう。

健康状態の不安

50代ともなると、健康状態に不安を抱えている人が多くなります。実際、住宅ローンでは団体信用生命保険への加入が義務付けられます。団体信用生命保険に加入できない状態であれば住宅ローンが組めず、マイホームの購入計画自体が暗礁に乗り上げてしまいます。

さらに「がん保障特約」や「三大疾病保障特約」など、さらに手厚い保障を付けられるのも50歳未満まで(51歳未満のケースもあり)です。住宅ローンは若いうちに借入した方が良いと言われるのは、加入できる団信の選択肢が多いからとも言えます。住宅ローンは「借金」であると同時に「生命保険」でもあります。万が一の時に、家族にマイホームを残すことができる制度ですので、しっかり利用したいところです。

50代では様々な病気のリスクが高まり、またすでに何かの疾患を持っており投薬治療などを受けているひとも多くいます。年収に問題がなく、銀行の住宅ローン審査を問題なく通過しても、団体信用生命保険の審査で落ちて住まうケースもあります。もちろん、団信加入が任意である「フラット35」を利用するなどの方法がありますが、団信不加入で住宅ローンを借入した場合には、さらに預貯金の準備をしておく必要があります。

退職金を当てにしても大丈夫?

返済計画をお伺いすると「退職金で返せばいい」という話をする方が多くいます。住宅ローンの返済に退職金を充てることには、利点とリスクの両方が伴います。

一番の利点は一括返済や繰上げ返済に退職金を充てることでローンの残高が減少し、総支払利息を大幅に削減できることでしょう。繰上げ返済により月々の返済額が減ると、退職後の収入減少に備えることができます。経済的な不安が軽減され、精神的な安心感が得られます。

一方で退職後の生活資金が不足するリスクがあります。退職後の生活費や医療費などの予測外の支出に対応できなくなる可能性があります。また退職金を運用することで得られる利回りがローンの利息よりも高い場合、その差額分の利益を逃すことになります。

今後は年金を受給できる年齢が上がることも考えられるので、退職金の使い道は慎重に判断することが重要です。

住宅ローンは長い期間をかけて支払えばよいという「期限の利益」を与えられています。皆さん「定年までに完済する」ことを一つの目標にした返済計画を立てるのがセオリーとなっていますが、50代からでも不可能というわけではありません。若い世代よりもより慎重に、老後に起こりうる様々なシチュエーションをしっかりとシミュレーションして購入計画を立てましょう。