「年老いた両親が住むために、マンション購入を考えています。私と姉でローンを組もうと思っています。」先日、こんなご相談がありました。その方のご両親は古い戸建(持ち家)に住んでいるものの、年齢とともに階段の上り下りがしにくくなったこと、築年数が古く耐震性が不十分であること、冬場の結露が酷いことなどが悩みで、セキュリテイのしっかりしたマンションへの住み替えを考えるようになったそうです。ご相談者である二人の姉妹はそれぞれ独立されていますが、正社員としてしっかりとご収入もあるため協力してローンを組みたいとのご意向です。こうしたケースは沢山ありそうなのですが、兄弟姉妹でのペアローンは可能なのでしょうか?
兄弟姉妹でのペアローン
そもそも「ペアローン」が利用できる人は、「購入物件に入居する夫婦や婚約者、親子」という制限があります。それぞれが借入本人となり、お互いに連帯保証人となることが求められます。今回は遠方に住んでいる姉妹が、両親が入居するためのマンション購入を計画している「親族居住型」となります。親族居住型では、本来「ペアローン」という考え方がありませんので、残念ながら姉妹でペアローンを借りるという方法は実現不可能ということになります。
では親族居住型ではなく、自分たちが住むための「自己居住用」としてはどうなのでしょうか?自己居住用として自分たちが入居するパターンでも、実は兄弟姉妹でのペアローンが認められるケースは非常に少ないです。(直系親族に兄弟姉妹しかいない場合など、特殊なケースの場合には認められる可能性があります。)金融機関としては、「今は同居していてもいずれ結婚などで独立する可能性が高い」と考えるからです。
何らかの事情で親にまとまった収入がないであるとかローンの借り入れが難しい場合に、子どもたちが協力してローンを組みたいという事例はあるのですが、なかなか実現は難しいのが現状です。
親のためにマイホームを購入する方法
では、親のためにマイホームを購入したい場合の実現方法としてはどのような形があるのでしょうか。
①現金を用意する
購入資金をすべて現金で準備する。一部資金を子どもが負担する場合には、出資割合に見合うだけの持ち分をつければ贈与と見なされません。
②兄弟姉妹の誰かひとりがローンを組む
兄弟姉妹でのペアローンは難しいですが、誰か一人が借り入れ名義人となって「親族居住型」のローンを借り入れすることは可能です。
ただし、子どもがすでに自己居住用の住宅ローンを借入れしているケースも多く、その場合にはダブルローンとなってしまいます。年収に対して与信枠が残り少ないと、希望する金額が借りられないことも考えられます。
③親子リレー返済を利用する
親子で協力してローンを組むパターンです。親が70歳未満であれば、年金収入などを年収として見てもらえるケースがあり親子で収入合算が可能です。ただし親子リレー返済では、その家に親子で同居することが求められるケースがほとんどです。
一部、「フラット35」の親子リレーでは「親と子が同居しなくても可能」としています。親が70歳未満で子どもの年齢が45歳未満であれば最長35年のローンを組むことも出来ます。独立した後の子どもが、親のために協力できるケースとしては珍しいかもしれません。
またフラット35の親子リレー返済は、親が子供のために協力する「子入居型」もあります。遠方に住む親御さんが、まだ年収が十部にない子供のために収入合算するケースです。ただしこの場合は主債務者(主たるローンの申込人)が親となり、支援を受ける子どもが連帯債務者という扱いになるため、物件に親の名義を付けることが大前提となります。
結論「親族居住用ローンはハードルが高め」
親が住むための住宅で子どもがローンを組むという方法は、結果的にはハードルが高いと言わざるを得ません。第一にある程度の年収がある年代の子どもは、自分自身の住宅ローンをすでに借入しているケースが多いので与信枠が少ないことが理由です。また今現在ローンが無くても、将来自分自身のマイホーム購入時に親族居住用のローンが既存の借入にカウントされ、希望する金額が借り入れ出来なくなる可能性があります。
ダブルローンを抱えることは、思った以上に厳しいということを知っておきましょう。
ただ今回のご相談のように、皆さんの「親孝行したい」という想いが何とか実現できる方法は決してゼロではありません。
「用意できる自己資金+子ども1人で協力できるローンの金額」をまず確認し、その予算内で購入できる中古物件を探すのも一つです。現在、所有している戸建ての土地を売却して購入資金に充てることも可能です。もしくは、現在の家に大幅なリフォームやリノベーションを施すもの一つです。
親世代としても、将来子どもに迷惑がかからないよう自身の住まい問題を考えておく必要があります。早目に家族で相談し、金融機関にも実現可能なパターンを相談してみましょう。