銀行で住宅ローンを借りる際には、必ず団体信用生命保険(団信)に加入します。団信は債務者が返済中に死亡、もしくは高度障害となった場合には保険金で残債を弁済する制度です。(健康状態により加入出来ない場合は、ワイド団信や不加入でも借入れ出来るフラット35を利用します。)一般的に基本の団信では、病気で働けなくなった場合の保障まではカバーしていません。そこで、「ガン団信」に加入するかどうかという選択肢があります。
高まるガン発症のリスク
今や日本人の2人に1人が生涯でガンになると言われ、2020年のデータでは男性の6人に1人、女性の4人に1人がガンで亡くなる現実があり、リスクは年々高まっています。ガンはいわゆる三大疾病(ガン、脳卒中、急性心筋梗塞)の中でも現役世代の罹患者が多い病気です。またガンからの復職率は5割を切り、退職率も4割を超えています。
万が一ガンに罹患し、仕事が続けられなくなった場合のリスクに備える必要があります。このような背景から、2001年より住宅ローンの団信にも「がん保障特約」(カーディフ生命が発売)がプラスされました。以降、保障対象はガンだけでなく
「3大疾病型」・・・脳卒中と急性心筋梗塞を追加
「8大疾病型」・・・高血圧症、慢性腎不全、慢性膵炎、肝硬変、糖尿病などの5つの重度慢性疾患を追加
「11大疾病型」・・・大動脈瘤および大動脈解離、上皮内新生物、皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がん追加
とカバーする内容が増え続け、最終的には精神障害等を除くすべての病気やケガを保障する「全疾病保障型」まで登場しました。
ガン団信の特徴
ガン団信の保険料は支払い金利にプラスされ、毎月の返済金額と一緒に支払います。ガン特約のみであれば、多くの金融機関が0.1%の上乗せとしているので、例えば3,000万円35年返済(変動金利、ボーナス払いなし)の住宅ローンであれば、月々1,340円の支払いアップで済みます。
90日の免責期間を過ぎてガンと診断されれば、その時点での住宅ローンの残債はゼロになります。ただし、通常は上皮内ガン・皮膚ガン(手術で簡単に取り除け転移もほとんどない)は除外されていることが多く、保険商品によってはこの範囲まで保障を広げるとさらに金利追加が必要になります。
ガン団信の注意点
大きな負担増もなく備えられるガン団信ですが、加入出来るのは多くが「満50歳まで」です。年齢で一線引かれてしまうため、住宅購入を考える際にはこうした保険への加入条件も知っておく必要があります。余談ですが住宅ローンの借替えの際も同様です。これまでガン団信に加入していたのに、借替え時点で50歳を超えていると一般団信しか加入出来なくなります。もしも年齢制限にかかる場合は、返済金額の軽減と保険の内容をトータルに比較して考えましょう。
また、当然ながらガン団信には住宅ローンを借入れしている人しか加入出来ません。夫単独名義の住宅ローンであれば、妻がガンになっても保障はありません。またペアローンを組んでいた場合も罹患した人の債務分しか保険は下りないので、健康な債務者のローンは残ったままです。
「ガン保険」との違い
一方、よく耳にする「ガン保険」とはどう違うのでしょうか。ガン保険の大きな目的は治療費をまかなうことなので、入院保障、通院保障、診断一時金などが支払われます。住宅を守るためのお金ではないので、もしガン団信に加入していなければ変わらず返済は続けなくてはなりません。2つの保障目的は全く異なりますので、それぞれの目的に合わせた準備をすることが大事です。
ガン50%保障団信
ガン団信の中でも、最近金利上乗せ無しで「50%保障」がついている金融機関があります。auじぶん銀行やソニー銀行といったネット系金融機関の住宅ローンでは、ガンと診断されたらローン残債が半分に減額されます。出来るだけ金利を抑えたいけれど、ガンにも備えておきたい人に向いています。
50%ではなくやはり100%ガン保障を付けたい場合には、0. 05%から 1%金利を上乗せして保障を増やすことも出来ます。
場合によっては本来対象外となる上皮内ガンや皮膚ガンの診断特約が付いていたり、ガン診断給付(100万円程度)やガン先進医療給付(通算1,000万円)などのオプションが付いていることもあります。さらに入院一時金、入院時ローン月額給付などが保障されるようなプランもあります。もちろん、保障が手厚くなれば上乗せ金利もアップしてしまいます。
現在は低金利で各金融機関の住宅ローンは横並びです。返済金額とともに、団信を比較して選ぶのもおすすめです。