最近、メディアで話題になっていた「フラット35の不正利用」についてのニュースをご存知ですか? これは、不動産投資に低金利の住宅ローンを悪用することで利益を出していた、ということなのですが、一体何が問題なのでしょうか。
今回は、フラット35などの住宅ローンの基本理念と、どうやって審査の切り抜けたのか、不正が発覚した後はどうなるのか、などを解説します。
投資用不動産とは?
まず、投資用不動産とは何でしょうか。「投資用にマンションを買った」とか「老後のために不動産投資を」などのキャッチコピーを耳にしたこともあるでしょう。
つまり、購入したマンションなどの不動産を第三者に貸し出し、その賃料収入で収益を出すというものです。この時に不動産を現金で購入すれば問題ないのですが、手持ち金が足りず借入れをした場合、「借入れの返済<賃料収入」となれば、儲けが発生するという資産運用です。
ところが正攻法で行くと「投資用の住宅ローン」の金利は2.5%~4.5%と高金利です。つまり返済金額が高くなり、よほどの賃料収入がないと収益が発生しないわけです。
フラット35の特徴
ここで、目を付けられたのが「フラット35」。言わずと知れた全期間固定金利の住宅ローンです。今月(2019年9月)時点での貸し出し金利は1.110%(借入期間21年~35年)と相変わらずの低水準をキープしています。投資用ローンの金利と比べれば、約半分です。
一度返済が始まれば、金融情勢が変化しようとも金利が変わることはありません。支払額が変わらない安心感と将来にわたる明確な計画性が、利用者にとってはとても有り難いローンなのです。
また、年収に対する審査基準が民間金融機関よりも大らかであることも人気の要因です。
年収が400万円以上(収入合算も可能)あれば、返済負担率は一律35%以内で借入することが出来ます。たとえ300万円未満でも返済負担率30%以内まで借入することが出来ます。年収300万円の場合でも、年間の住宅ローン返済額が90万円未満であれば住宅ローンが借りれられるということなのです。つまり、低所得者にも住宅購入の門戸を開いてくれているのです。
フラット35を始め民間金融機関の住宅ローンも、「自己居住用」=自分が住むための家を買うため、というそもそもの大前提があります。これは借入概要にもきちんと明記してあります。自分自身が住むという目的以外にも、「親族(親や子供)が住むため」「セカンドハウス」(フラット35では認められている)という場合も含められていますが、はっきりと「賃料を得るために他人に住まわせる投資用」とは一線を画しています。
フラット35は住宅金融支援機構という独立行政法人が扱う住宅ローンで、全国の金融機関が貸し出し窓口となっています。いわば公的な住宅ローンです。
広く国民の住宅取得の機会をバックアップするものであって、「投資」という資産形成や収益に結び付いてはならないのです。要は、「貸し出したお金を元手に、儲けてもらっては困る」わけですね。
では、本来目的が違うのにどうやって審査を切り抜けていたのでしょうか。
自己居住用であることの証明には、入居した証拠としてそのマンションの住所に一旦住所変更し、住民票を提出します。本来であれば、その部屋で実際に生活が始まるので実態に即していることになります。
ところが投資用として不正利用した場合は、当初入居した形を取り、実際には賃貸に出すという方法をとるのです。
一旦借りてしまえば、後から全件入居しているかどうか確認されることはないという盲点を悪用しています。
(一昔前は、マンションのエントランスや郵便受けに個人名を表記していました。最近は個人情報保護の観点から堂々と表記されるケースが減ってきているので、余計に発覚しづらいという面もあります。)
実際には、当初自己居住用として入居していたのにも関わらず、途中で転勤など止むを得ず住み続けることが出来なくなるケースもあります。そうした場合は、きちんと金融機関に届け出をすることで借入れを継続することが可能です。
最初から投資用目的で利用した場合とは、明らかに違います。
不正利用が発覚したらどうなる?
こうした不正利用の発覚は内部通報であったり、現住所と物件住所が違うなど、どこかで「無理がある」ことがバレてしまうものです。
当然、本来の目的と異なる利用であり、申込み時点で虚偽があったとなると、即刻「全額一括返済」を請求されます。
せっかく手にしたマンションは売却する羽目になりますし、そうした利用者が将来本当に自分が住むための不動産を購入した時には、二度とその融資の審査には通らないことも考えれます。
初めは住宅ローンを悪用する意図はなくても、知識の少ない若い人や低所得者を狙って甘いセールストークで近づいてくる悪い業者が残念ながら存在します。
「こんなはずじゃなかった・・・」とならないよう注意しましょう。