昨年6月に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が改正されました。マンションそのものの老朽化や入居者の高齢化などによって、健全な管理が出来なくなる問題が増加傾向にあるからです。その中で2022年4月より、マンション管理適正化の推進を目的にした「マンション管理計画認定制度」がスタートしました。
分譲マンションは「管理を買え」と言われるほど、入居後の管理体制が重要視され資産価値を左右します。新しく始まった認定制度とはどんなものなのか?またこの制度が導入されることによるメリットは何なのか?解説していきたいと思います。
「マンション管理計画認定制度」とは
「マンション管理計画認定制度」とは、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に地方自治体から「適切な管理計画を持つマンション」として認定を受けることができる制度です。認定項目としては下記のものが挙げられます。
①管理組合の運営
- 管理者及び監事が定められている
- 集会(総会)が定期的に開催されている
②管理規約
- 管理規約が作成されている
- 管理規約にて、緊急時等における専有部分の立ち入りが定められている
- 管理規約にて、修繕等の履歴情報の保管が定められている
- 管理規約にて、管理組合の財務・管理に関する情報の提供が定められている
③管理組合の経理
- 管理費と修繕積立金の区分経理がされている
- 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない
- 修繕積立金の滞納に適切に対処されている
④長期修繕計画の作成及び見直し等
- 長期修繕計画(標準様式準拠)の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金が集会(総会)で決議されている
- 長期修繕計画が7年以内に作成または見直しがされている
- 長期修繕計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
- 長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない
- 長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でない
- 計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっている
⑤その他
- 組合員名簿、居住者名簿が適切に備えられている
- 都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものである
これら以外にも、その自治体独自の項目を設定することも可能になっています。
認定を受けることでどんなメリットがある?
マンション管理計画認定を受けると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まずは区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなることが挙げられます。管理組合の理事だけでなく入居者全員が管理規約を読み込み、管理組合の運営に積極的に取り組むことが重要になってきます。
そしてその結果、適正に管理されたマンションとして、市場において評価されることに繋がります。今後の中古マンション市場においては、管理の内容や質がより売買の決め手となるでしょう。
さらに適正に管理されたマンションが存在することで、立地している地域価値の維持向上に繋がることも期待されます。さらに住宅金融支援機構の「フラット35」及び「マンション共用部分リフォーム融資」の金利の引下げ等の優遇を受けることも出来ます。
今後の中古マンション市場への影響
「マンション管理計画認定制度」が中古マンション市場において大きな役割を担うようになるには、まずマンション所有者と購入希望者、デベロッパーや仲介業者などの関係者に認知されることが大前提となります。
また認定を受けるには管理組合にとっては少なからず事務手続の負担がかかり、一度認定を受けたとしても5年ごとの更新が必要となります。またこの認定制度は「任意規定」であるため全国的な義務ではありません。そもそもマンションがある自治体が「マンション管理適正化推進計画」を策定していないと申請できない側面もあります。申請できる自治体であっても管理組合が意欲的でなければ、制度の効果は浸透しません。認定を受けることで安心感は得られますが、制度が一定の効果を発揮するようになるには税制の優遇や保険料の割引など金銭的なインセンティブが必要とも言われています。管理組合にとっては、現実的な動機付けが必要となるのかもしれません。
ただこれまで中古マンションの管理状態を可視化できる公的な仕組みはありませんでした。というのも、管理の優劣を比較する明確な基準が存在していなかったからです。事前にそのマンションの管理状態がどうなのかという「情報」は入手することは出来ましたが、客観的な判断は素人には難しい現実がありました。今回のマンション管理計画認定制度がスタートすることで選ぶ側にとっては判断基準が明確になり、管理に比重を置いたマンションが沢山流通するようになることが期待されます。