「フラット35 」は住宅金融支援機構が取り扱う住宅ローンですが、実は「買取型」と「保証型」という2つの種別があります。どちらも全期間固定金利なのは共通ですが、融資の仕組みや細かいルールに差異があります。また、全国の金融機関で取り扱っているのはほとんどが「買取型」です。保証型であれば「フラット35 (保証型)」とわざわざ明記されて区別しています。実は保証型を取り扱っている金融機関は、現在わずか8機関(日本住宅ローン、アルヒ、財形住宅金融、クレディセゾン、住信SBIネット銀行、愛媛銀行、日本モーゲージサービス)しかありません。
今回は、「買取型」と「保証型」の違いについてお話します。
融資の仕組みの違い
まず「買取型」の仕組みですが、そもそも住宅金融支援機構は直接「住宅ローン」を販売しておらず、全国300余りの金融機関が窓口となって取り扱っています。住宅金融支援機構は金銭消費貸借契約が完了した住宅ローンを買い取り、それを担保とする債券を発行し機関投資家に販売しています。そこでの安定した資金調達が「全期間固定金利」を可能にしているのです。
また、毎月の金利の「上限」「下限」を住宅金融支援機構が決定しています。
一方「保証型」は住宅ローンが返済されなくなった場合に、債務者の住宅ローン返済と機関投資家への元利金払いを住宅金融支援機構が行うことになっています。要は、住宅金融支援機構が保証会社の役割をするわけです。ここから「保証型」という名前がついています。毎月の金利は、各金融機関が決定しています。「買取型」よりも独自の特色を打ち出しやすいので、近年取り扱う金融機関が増えてはきましたが、まだまだ上記の8機関にとどまっているという状況です。
保証型の魅力は金利の低さ
「保証型」では取扱金融機関ごとに毎月の金利を決定していますが、「買取型」よりもより低い金利のカテゴリーが設定されています。
例えばアルヒやクレディセゾンなどでは、自己資金の割合に応じて数種類の金利区分があります。
アルヒスーパーフラット(2021年6月 金利Aタイプ 団信不加入の場合)
| 当初10年間 | 11年目以降 |
アルヒスーパーフラット6S | 0.65% | 0.90% |
アルヒスーパーフラット6.5S | 0.66% | 0.91% |
アルヒスーパーフラット7S | 0.67% | 0.92% |
アルヒスーパーフラット7.5S | 0.68% | 0.93% |
アルヒスーパーフラット8S | 0.69% | 0.94% |
アルヒスーパーフラット8.5S | 0.74% | 0.99% |
アルヒスーパーフラット9S | 0.77% | 1.02% |
6、6.5、7、7.5という数字は価格に対しての融資割合を意味しています。つまり、自己資金が4割であれば6のカテゴリー、自己資金が2割であれば8のカテゴリーの金利が適用となるのです。当然、自己資金の割合が多いほど適用金利が低くなるのです。
一方「買取型」では借入年数によって2つの金利区分があります。
2021年6月の最低金利では
借入期間15年~20年で1.22%
借入期間21年~35年で1.35%
となっており、借入期間が短いと低金利になります。
団体信用生命保険の違い
フラット35 は団体信用生命保険の加入が任意となっている点が、一般の住宅ローンとの大きな違いです。既往症のある方や術後間もない方も、借り入れすることが出来きます。団信不加入(審査後謝絶となったケースも含む)の場合、買取型では毎月の金利から0.2%差し引いたものが適用となります。
一方、保証型では各金融機関のHPに掲載されている金利は「団信不加入の場合」となっているケースが多いので要注意です。団信にきちんと加入する場合は、0.2%程度上乗せとなります。
また、フラット35 の団信では「夫婦連生 デュエット」と呼ばれる他にはない団信加入方法があります。これは、申込本人と連帯債務者である配偶者とが2人で加入する方法です。どちらかに万が一のことがあった場合には、その時点での残債を100%弁済してくれます。
これが民間金融機関のペアローンで組んだ場合との大きな違いです。ペアローンは、夫婦それぞれで二本だての住宅ローンを借入する方法なので、それぞれの借入金額分の団体信用生命保険に加入します。どちらかに万が一のことがあった場合には、その人の借入した金額しか弁済されません。
ただし、この「夫婦連生 デュエット」は「買取型」にしかない加入方法です。「保証型」は各金融機関が用意した保険に加入しますので、連帯債務者がいる場合はどちらか1人にしか保険をかけることが出来ません。
金利を重視するか、団信を重視するかで利用する種類が変わってきます。
フラット35 を利用する際には、買取型と保証型の両方をシミュレーションしてみると良いでしょう。