先日、「住宅ローン控除」が改正される方向で調整されているとのニュースが報じられました。まだ正式決定ではありませんが、これからマイホームを購入する人にとっては大きく関わってくる税制です。もしかすると、皆さんが利用する住宅ローン選びにも変化が生まれそうな気配があります。今回は住宅ローン控除の主な改正点についてお話しします。
面積要件の引き下げ
まずは、住宅ローン控除を受けられる住宅の面積要件です。「床面積が50㎡以上であること」が必須でしたが、「40㎡以上」に引き下げられるようです。(そしてこの面積は壁の内側から測った「登記面積」である点は変わりません。パンフレット面積が壁の中心から測った壁芯面積であるため、登記簿謄本に記載された面積が少し小さくなることを再度確認してしておきましょう。)
これまではファミリータイプの住宅を対象としていたため、50㎡という基準となっていました。時代の変化とともに、単身世帯が持ち家を購入するケースも多くなっていることに対応した形です。いわゆる1Rや1LDKの間取りでも住宅ローン控除が受けられるようになりそうです。ただし、新しく「50㎡未満の住宅では、1000万円の所得制限を設ける」ことが発表されました。高所得層には還元されないことになります。
13年間控除が受けられる特例の入居期限の延長
消費税が8%から10%に増税されたことに伴い、契約時期と入居時期の要件を満たした場合には住宅ローン控除が通常の10年間から13年間に延長される特例がありました。
実は「入居期限が2020年12月末まで」となっていたため、あと少しで期限を迎えるところでした。しかし今年は不動産業界でも新型コロナウイルスの影響を受けており、この期限を延長するよう要望が出ていました。さらに2年間延長され、2022年12月末までに入居すれば住宅ローン控除が13年間受けられるようです。
控除対象が「ローン残高の1%」から「支払った利息」へ変わる?
上記2点の改正については、利用者にとって歓迎すべきポイントでした。しかし、一方でこれまで還付される税金の金額が「ローン残高の1%」「最大40万円」でしたが、あまりにも低金利時代が続くため、「そこまで控除しなくても良いのではないか?」という論調になってきたのです。この問題については会計検査院がかなり注視していたといわれます。
現在、どの金融機関でも変動金利は1%を切っており、0.5%前後で安定しています。支払っている金利が1%以下であるのに、控除が1%では得をする利用者が多数発生しているのが現状です。
つまり、本来ならば住宅ローンを借りる必要がない人が借り入れしたり、繰上げ返済をしなくなる動機になっていることが問題視されているわけです。
「ローン残高の1%」もしくは「実際に支払った利息」のどちらか少ない方を還付するという変更がされた場合、実際どのくらい差が生まれるのかシミュレーションしてみましょう。
借入金額 4000万円 35年 変動金利0.575%
1年後のローン残高 38,965,290円の1%=389,652円
1年間の支払い利息 227,270円
どちらか少ない方とされると最大還付金額は227,270円になるため、実に162,382円もの差が生まれます。
住宅ローンを金利だけで選ばなくなる?
これまでは少しでも金利が低い住宅ローンを探し、少しでも支払い金額を抑えてマイホームを購入するのが主流でした。ところが、支払い利息がローン控除の対象となることで流れが変わる気配があります。
通常、民間金融機関の住宅ローンでは団体信用生命保険料も金利に含まれていますが、「死亡・高度障害」時のみのベーシックな保障だけです。このベースにがん保障や3大疾病、8大疾病など保障の追加を希望する際にはさらなる金利の上乗せが必要です。一般的に0.1%から0.3%上乗せとなり、毎月の支払額にダイレクトに影響していました。
ところが今回の住宅ローン控除の改正で「支払った利息」が対象となると、これまで金利上乗せでがん保障などを諦めていた人が保険に加入するケースが増えるかもしれません。もちろん、住宅ローン控除は10年(13年)に限ったことなので資金計画をトータルで考える必要はあります。同じように、住宅ローンを借入する際の手数料(保証料)を金利に含める商品もあります。内枠方式と呼ばれる商品です。一般的に借入れ額の2.2%と決して安くない金額になりますので、購入時の諸費用(現金)を節約したい人にとっては、ローン控除で還付されることでより利用しやすくなるかもしれません。
今後正式に国会で承認されてからの運用になりますが、これからマイホームを購入する方は「ローン控除が変わる」ことを知っておきましょう。