マンションと一言でいっても、3階〜5階ぐらいの低層ものから、20階以上の高層タワーマンションまで、高さにバリエーションがあります。もちろん、建築基準法によって建てられる地域の制限もありますし、その高さによって「建て方」つまり構造も違ってくるのです。
今回は、マンションの構造に着目してみましょう。
「地震大国」日本
ご存知のとおり、日本という国は昔から地震の被害に悩まされてきた「地震大国」です。
当然、国の法律で地震に耐えられない建物はそもそも建築出来ません。
建築基準法が大きく変わったのは、1981年(昭和56年)に遡ります。1981年6月以降の耐震基準を「新耐震基準」と呼び、それ以前1981年5月以前の「旧耐震基準」と区別するようになりました。つまり新耐震基準で建築許可された住居であれば、大地震発生の際にも建物の倒壊や崩壊は逃れ、建物の中にいる人の命は守られる程度の耐震性を備えていることになるのです。
中古マンション購入を考える際には、その建物が1981年6月以降に建築許可を取得しているかどうかが大きなポイントとなります。それ以前の物件だと住宅ローンが使えないことがありますので注意しましょう。
耐震構造とは
耐震構造とは、読んで字の如く「地震の揺れに耐える」ことが出来る強い建物です。震度7程度の地震にも耐える構造になっています。
分譲マンションは鉄筋コンクリート造が通常です。木造の戸建て住宅と違い、地下の硬い地盤(支持層)まで基礎杭が打ち込まれています。
ただ、建物自身が重いコンクリートの塊となるため、どうしても柱や天井の梁が出っ張ってしまう事になります。しかし、これも建築技術の進歩により、部屋内に柱が出ないアウトフレーム工法や壁式構造の出現で出っ張りのないすっきりとした構造を実現できるようになってきました。
現在の日本の低中層マンションのほとんどは耐震構造となっています。
揺れに対して強い反面、建物の「しなり」が無く地面から直接揺れを受けることになりますので、どうしても部屋の中の家具は転倒し易くなったり窓ガラスも割れ易くなってしまいます。もしもに備え、家財道具の転倒を防ぐ予防策は不可欠です。
免震構造とは
もう一つ主流となるのが「免震構造」ですが、地震が起きた時にその揺れに耐える「耐震構造」と建て方が大きく違っています。免震構造は建物を地盤から切り離し、その間にアイソレーター(積層ゴムなどの免震装置)を挟むことで建物揺れの加速度を2分の1から3分の1程度低減する工法を言います。
耐震構造で建築できる建物の高さには限界があります。もしも高層建物を耐震構造で建築してしまうと、大きな地震の際には建物の途中でポキンと折れてしまうような被害が起こります。
そのため多くのタワーマンションで採用されているのは免震構造になります。
地震の揺れが耐震構造よりも伝わりにくく、ゆっくりと並行に揺れるため耐震構造よりも家具の転倒が少なくなります。しかしそうした構造上、台風並みの強風などでも建物が揺れてしまうこともあります。繰り返しの揺れにも耐えられるのは大きな強みです。
では、すべてのマンションでこの免震構造を採用すれば良いのではないか?と考えてしまいますが、実際にはそう簡単にはいかないというのが現状です。
免震構造は非常にコストが高いので、戸数が少なくなりがちな低層マンションや、敷地に対して横に長い構造の建物ではなかなか実現しません。
制震構造とは
もう一つ揺れを逃すタイプの建て方に「制震構造」があります。
地震のエネルギーを吸収するダンパーなどを建物内の骨組みの部分に設けて、振動や衝撃を和らげる構造体を指します。柱と柱の間のブレース(筋かい)とオイルダンパーを組み合わせるタイプや、間柱の中央に鋼板を入れるタイプなどがあります。 地震の揺れだけでなく、風による揺れにも強く、暴風時の居住性を向上させる構造となっており、超高層のタワーマンションで多く採用されています。
これらの工法がどれだけ威力を発揮するかは、その地震の規模や震源までの近さ、揺れ方などの様々な要因が関係するため一概に言うことは出来ません。
高さ60mを超える超高建物の場合には、通常の建築基準法に基づく建築確認ではなく、より厳しい審査がある国土交通省の許可が必要になります。
また、こうした強固な建築方法に頼るだけでなく、自家発電装置の付いた非常用エレベーターや中央管理室の設置、消防設備を監視する防災センターが併設されているなど、独自の防災設備がある物件も増えてきました。災害時の備蓄倉庫などを完備しているマンションもあります。
日本全国、どこに住んでいても「大地震の可能性」はゼロではありません。また、残念ながら100%の安心というものも存在しません。
それぞれの構造の特色を知って、マンション選びの参考にして下さい。