前回、住宅ローン控除が利用できる人の「適用要件」についてお話ししました。
では、その人達は一体いくら取り戻せるのかを解説していきます。
住宅ローン控除で一点注意しなくてはならないのは、「家を買えば毎年40万円もらえる」と誤解している人がいることです。
実は住宅ローン控除は「税金の控除」です。財源は自分が支払った税金です。給付金や助成金などと違って「もらえるお金」ではなく、あくまで支払い済みの税金を取り戻すものです。
住宅ローンの「年末残高証明書」とは?
あなたが取り戻せる税金を計算するときに、その計算根拠となる大事な書類が「年末残高証明書」です。これは、昨年の年末時点で「あなたが借入れた住宅ローンがいくら残っているのか?」を記載した書類です。(書類名は金融機関によって異なります。「住宅ローン残高証明書」「住宅取得金に係る借入金の年末残高証明書」「融資残高証明書」・・・などがあります。)
ここでいう残高とは、住宅ローンの返済が始まり、借入れ当初から少し減っているはずの「元金」です。
住宅ローン控除では、この年末残高の1%を10年間返します、という制度です。
ただし、「上限4,000万円」という制約があります。
つまり、4,000万円×1%=40万円 となり、最大でも取り戻せる金額は年間40万円となります。
(もうすぐ消費税が10%に上がりますが、上記の内容は消費税率8%で住宅を取得した人に適用されます。)
住宅ローンを5,000万円借入れした人で年末残高が4,000万円を超えていた場合は、その超えてしまっている部分については残念ながら対象外です。
まず「年末残高×1%」が簡単に計算できると思います。
住宅ローン控除がを始めて利用する人にとっては、昨年返済がスタートしたばかりですので、そこまで借入れ元金は減っていないでしょう。
例えば3,500万円の住宅ローンを借入れした人であれば、ざっくりと35万円弱・・・という感じです。
源泉徴収票を見てみよう
ここで、あなたの最新の源泉徴収票を確認してみましょう。昨年1年分の給与収入が書いてある源泉徴収票です。この書類の中に「源泉徴収額」という欄があります。この欄に記載されている数字は、あなたが昨年1年間に納めた「所得税」の金額です。
この金額こそが、住宅ローン控除で取り戻すことのできる税金なのです!!
この時に是非確認していただきたいのが、「年末残高×1%」と「源泉徴収額」どちらが多いか?ということです。
実は、住宅ローン控除で取り戻せるのはあなたが支払った所得税の金額までです。つまり源泉徴収額で頭打ちなのです。
先程の例で言うと、3,500万円借入れしたからざっくり35万円弱戻ってくるはず。しかしあなたの源泉徴収額が30万円であれば、「取り戻せるのは30万円まで」となります。
最初にお話した「自分が支払った税金を取り戻す」というのは、まさにこれです。
元々納めていない部分のお金は財源がないので取り戻すことは出来ません。
逆にあなたの源泉徴収額が40万円だったとしましょう。この場合は、住宅ローン控除の金額の方が少ないので、「年末残高×1%」の金額を満額取り戻すことが出来ます。
控除しきれなかった部分は住民税から控除出来る!
所得税の金額が控除となる金額より少なかった場合。
「35万円戻ると思っていたのに30万円が限度か・・・」とガッカリしてしましますが、実は控除しきれなかった残りの部分については、なんと住民税で控除(上限あり)で取り戻せるのです!
具体的には 所得税の課税総所得金額等 × 7% (最高136,500円) となります。
最高136,500円ですから、先程の5万円は全額取り戻せるということになりますね。
住民税の控除部分については、一部の例外を除き自動的に行われるので改めて市町村に住民税の申告をする必要はありません。
今回確定申告をすることで、翌年度の住民税は住宅ローン控除後の金額が天引きされます。所得税部分の控除とは別に、「住民税が安くなる」という控除なので実感が湧きにくいかもしれません。
住宅ローン控除の1年目のみ確定申告で手続きをしますが、その先はどうしたら良いでしょう。
2年目以降の控除については、毎年勤務先で行なっているはずの「年末調整」で手続きします。
生命保険などの控除証明書と一緒に、住宅ローンの残高証明書を提出しましょう。
その際には、併せて「住宅借入金等特別控除証明書」を1枚忘れずに提出して下さい。
これは、確定申告をすると税務署から送られてくる書類です。住宅ローン控除の残りの9年分が一度に送られてくるので無くさないように保管しておきましょう。