マンションの修繕積立金は値上げに注意!「段階増額積立方式」とは

不動産コラム

分譲マンションを購入すると、住宅ローンの返済に加えて管理費・修繕積立金という毎月のランニングコストが必要です。実は修繕積立金は入居後一定金額ではなく、増額される可能性が高い経費なのです。毎月の住宅コストは家計に占める割合が大きいため、どのくらいのスパンで、いくらになるのかをきちんと把握しておく必要があります。

段階増額積立方式とは

修繕積立金は管理費と違い、将来の大規模修繕に向けて計画的に積み立てるお金です。ほとんどのマンションでは新築時から30年間にわたる「長期修繕計画」を立て、必要な金額を算出して所有者から徴収する仕組みになっています。

その徴収方法として、必要な金額を毎月均等に所有者から集めるのが「均等積立方式」です。均等積立方式は当初の負担金額が高額になってしまうため、一次取得者(新築時に購入する消費者)が購入に躊躇してしまう要因となってしまいます。そこで、ほとんどのマンションが採用しているのが「段階増額積立方式」です。当初の負担を軽くし、文字通り段階的に負担金を増やしていく方法です。

国土交通省の2023年の調査によると、全体の40.5%が均等積立方式、47.1%が段階増額積立方式となっています。こう見ると半々のように感じますが、2015年以降竣工の新築マンションでは実に81.2%が段階増額積立方式を採用しています。

引き上げのスパンは物件によりますが、5年ごと、10年ごとという一定期間ごとに修繕積立金が増額となります。したがって、マンション購入の際には「将来的に毎月のランニングコストが上がる」ことを念頭に資金計画を立てる必要があります。

実際にどれだけ増額される?

では実際にどのような増額が行われているのでしょうか。国土交通省の調査では、1985年~1989年に新築されたマンション、つまり築35年から39年が経過しているマンションで増額後の積立金が大きいという結果になっています。当初1㎡あたりの積立金額が88.5円だったのが最終的に288.4円、例えば65㎡のマンションでは5,750円から18,750円にもアップしていることになります。実に3倍以上の値上がり実績です。

また、とある新築タワーマンションの長期修繕計画では、「5年ごと、㎡あたり約100円の増加」という予定になっています。例えば65㎡の3LDKの修繕積立金が当初9,750円だった場合、5年後には16,250円にアップすることになります。さらに5年後には22,750円です。こちらも3倍以上の値上げ計画となります。

修繕積立金を増額しないとどうなる?

もちろんこの値上げ計画は、管理組合の総会で可決された上で実行されます。値上げに反対が多ければ据え置きとなるでしょう。しかし計画通りの値上げをせずに積立を続けると、大規模修繕を迎える時期に必要な金額が積み立てられていないという事実に直面してしまいます。

また計画通りに値上げを実行したとしても、長期修繕計画の実施に必要な金額が積みあがっていないマンションが多く存在しています。現在の修繕積立金が、計画よりも多く積みあがっているとする管理組合は38.9%となっていますが、逆に不足している管理組合は36.6%、実に4割程度のマンションが何らかの対応を迫られている結果となっています。

修繕積立金不足を補うには?

マンションは共同住宅であり、区分所有者の共有資産です。そのため大規模修繕を怠るわけにはいかない運命にあります。十分な修繕積立金が積みあがっていない場合には、不足分を何らかの方法で補填しなければなりません。一般的には修繕積立金の増額する、一時負担金を徴収する、管理組合で金融機関から借り入れをする、といった方法が考えられます。

ただ、マンションの築年数が経過すると同時に、入居者も高齢化していきます。修繕積立金が増加するのに反比例して、入居者は定年を迎えるなど年収が下がっていくというジレンマがあり、積立金の増額が簡単にはいかないという現実もあります。修繕積立金の不足が解消されないと、計画通りの修繕工事が実施できず、結果的にマンションの資産価値を低下させてしまうことになります。

特に中古マンションで購入する場合には修繕積立金が上昇している過程である可能性が高いので、積立金の残高が十分にあるか、今後の増額の計画はどうなっているかをしっかりと確認しましょう。

新築マンションや戸建てへの住み替え

実際、大規模修繕工事が行われる12年あたりを目前に売却を考える人は多くいます。築年数が長くなり過ぎない段階で、かつランニングコストの負担が上がらないうちに新築マンションへ住み替える、もしくはランニングコストのかからない戸建て住宅への住み替えを検討するのも一つの方法です。そのためには、購入する際に「売却しやすい物件」を選ぶことが重要となります。

マンションは住宅ローン返済だけでなく、ランニングコストの変化も含めて慎重に購入計画を立てましょう。