「つなぎ融資」という言葉を聞いたことはありますか?つなぎ融資とは、住宅ローンが実行される前に必要な資金を一時的に立て替えるために受ける融資です。注文住宅を建てる土地の代金や工事費用の一部、着工金、中間金などに充てられ、自己資金が少なくても家を購入することができます。また、住宅ローンの実行が住宅の引き渡し時に間に合わない場合や、現在の住宅を売却する前に新居を購入する「買い先行型」のケースでも利用されます。
「つなぎ融資」の仕組み
「つなぎ融資」は住宅の引き渡し前に発生する費用を支払うため、あくまでも一時的に利用する融資です。一方「住宅ローン」は、住宅が完成し引渡時点で融資が実行されます。つまり、住宅ローンは住宅の完成前には組むことが不可能なのです。別途自己資金で準備することができれば問題ないのですが、自己資金が不足している場合や、一時的でも拠出したくない場合には,つなぎ融資で費用を賄うことができます。
そして一時的な借り入れであるつなぎ融資は、住宅ローンのように数年かけて返済するのではなく、住宅ローンの融資実行時にまとめて返済するのが一般的です。住宅ローンで借入予定の一部を前借りするようなイメージです。
また、つなぎ融資を利用する際にも取扱手数料や印紙代などの費用がかかります。さらに金利もかかることになりますが、住宅ローンと比べると比較的高く2%~4%が一般的です。金利はつなぎ融資を実行してから住宅ローンで一括返済するまでの期間だけ必要となります。金利は諸費用として準備しておく必要があるので、資金計画の際には注意しましょう。何かの事情で建物の完成が遅れた場合には、つなぎ融資の期間が延長され金利負担が増加することになります。
ちなみに住宅ローンでは抵当権を設定しますが、つなぎ融資は無担保で借入することが可能です。建物が未完成で引渡し前のため担保を設定することができないため、その分金利を高く設定しているというわけです。したがって、登記費用は不要となります。
「つなぎ融資」が必要となるタイミング
マンションや建売住宅を購入する場合には、契約時に手付金を支払い、残りの代金は引き渡し時まで必要ありません。つなぎ融資は多くの場合注文住宅で必要となります。建物を建築する工務店などに「着工金(着手金)」「中間金」といった名目で支払うタイミングで、つなぎ融資が登場します。必要なタイミングで利用することができる便利さがある一方、回数は土地代・着工金・中間金の計3回まで、金額の上限は住宅ローン借入金額の3割から4割までといったように、回数や金額に制約があるのが一般的です。工務店や不動産会社が提携している銀行であればこうした条件などは利用しやすくなっていることが多いので、自身で探すのが不安であれば紹介してもらいましょう。
「つなぎ融資」利用時の注意点
特に注文住宅を建築する人にとっては利用する機会の多いつなぎ融資ですが、注意点もあります。
取り扱い金融機関が限られている
実はつなぎ融資はどこの金融機関でも扱っているわけではありません。仕組みとして住宅ローン実行時に返済することになりますので、住宅ローンとつなぎ融資両方を扱っている金融機関を探す必要があります。もちろん金融機関によって内容に差があるため、事前にしっかり確認しておくことがポイントです。必然的に利用できる住宅ローンの選択肢が狭まってしまうことも知っておきましょう。
「フラット35」を利用する場合、フラット35自体につなぎ融資の制度はありません。しかし取り扱い金融機関の方で、独自につなぎ融資を準備しているケースがあります。ARUHI、イオン銀行、優良住宅ローンではつなぎ融資の取り扱いがありますので、フラット35を利用する際には是非確認してみてください。
住宅ローン控除は対象外
マイホーム購入時に住宅ローンを利用する人にとっては、所得税の控除が受けられる「住宅ローン控除」の恩恵は非常に大きいものです。つなぎ融資は引き渡しを受ける前の一時的な借り入れであり、住宅ローン控除の要件である「10年以上の借入期間」を満たしていません。残念ながら、住宅ローン控除は利用できないことも知っておきましょう。
注文住宅を考えている人は、土地購入とともにつなぎ融資のスケジュールを平行して考える必要があります。資金が必要な時に慌てないよう、事前準備とリサーチをしっかりしておきましょう。