令和6年度の税制改正大綱をよく確認すると、「子育て支援」をキーワードとした支援策が2つあります。
一つ目は「住宅ローン控除の改正」です。従来の住宅ローン控除にプラスして、子育て世帯の方には恩恵があります。二つ目は「住宅リフォーム税制の拡充」で、子育てに特化したリフォームをした場合に控除があります。是非知っておいていただきたい改正ポイントなので、詳しく見てみましょう。
「子育て特例対象個人」とは
今回の改正の対象となるのは「子育て特例対象個人」と呼ばれる人です。
対象となるのは
- 年齢40歳未満かつ配偶者を有する個人
- 年齢40歳以上かつ年齢40歳未満の配偶者を有する個人
- 年齢19歳未満の扶養親族を有する個人
とされています。
少し言い方が難しいので言い換えると
- 夫婦のいずれかが40歳未満の人
- 40歳以上でも19歳未満の子供がいる人
となります。
つまり「子育て特例対象個人」とは、若年夫婦世帯、一部の晩婚夫婦世帯、高校生までの子供がいる世帯となります。
まずは、あなたが対象となる世帯かどうかを確認しましょう。
1:住宅ローン控除の拡充
マイホーム購入の税制優遇の目玉ともいえる「住宅ローン控除」は、住宅ローン残高の0.7%を控除できる制度です。令和6年中に入居した場合の控除期間は10年間となります。
近年の改正ではカーボンニュートラルを推進する政府の方針で住宅そのものに対する要件が厳しくなっています。基本的に「省エネ住宅」であることが求められ、さらに徐々に控除限度額が引き下げられる中、今回の子育て支援では控除金額が下記のとおり拡充されます。A
A)認定住宅・・・4,500万円→5,000万円
B)ZEH水準省エネ住宅・・・3,500万円→4,500万円
C)省エネ基準適合住宅・・・3,000万円→4,000万円
認定住宅では500万円、ZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅では1,000万円も上乗せされます。
控除される最大金額を計算すると
A)認定住宅・・・315,000円→350,000円
B)ZEH水準省エネ住宅・・・245,000万円→315,000円
C)省エネ基準適合住宅・・・210,000円→280,000円
これだけの差が生まれます。
ただし、注意しなくてはならないポイントがいくつかあります。
まずは子育て特例対象個人であっても、省エネ基準を満たしていないその他の住宅と中古住宅を購入した場合には対象外となることです。また子育て特例対象個人に当てはまらない人、例えば単身者や子どものいない40歳以上の夫婦世帯には、控除対象借入限度額に係る改正の恩恵はありません。
そしてこの子育て特例はあくまでも令和6年12月31日までに入居した場合に限られることです。今後延長される可能性もゼロではありませんが、現状では今年だけの特例だと認識しておきましょう。
2:子育て世帯のリフォームに係る税制の新設
従来の既存住宅の耐震・バリアフリー・省エネ・三世代同居・耐久性向上リフォームに係る特例措置を2年間延長したことに加え、子育て世帯に対する税制優遇が新設されました。住宅ローン控除同様、「子育て特例対象個人」が既存住宅で行うリフォームで控除を受けることができます。
対象となる工事は高齢者向けのバリアフリー化等とは異なり、「一定の子育て対応改修工事をした場合」と定義されています。
例えば、
- 住宅内における子どもの事故を防止するための工事
- 対面式キッチンへの交換工事
- 開口部の防犯性を高める工事
- 収納設備を増設する工事
- 開口部・界壁・床の防音性を高める工事
- 間取り変更工事(一定のものに限る)
などがあります。
これらの標準的な工事費用相当額の10%が所得税から控除されます。対象工事限度額は250万円で最大控除額は25万円となります。また標準的な工事費用の額が50万円超(増改築にかかる費用から国又は地方公共団体から交付される補助金等を除いた金額)という要件もあります。適用期間は上記の一定の子育て対応改修工事をして、2024(令和6)年4月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合とされています。
こちらも住宅ローン控除と同様令和6年いっぱいの適用となっており、適用を受ける人の所得要件としては「その年分の合計所得金額が2,000万円以下」とされています。
今後はどうなる?
ひとまず令和6年度の税制改正では、この2つの税制優遇は今年限りとされています。ただしこれからも日本の少子化対策は最重要課題の一つでもあり、継続的な子育て世帯に対する援助は不可欠です。
これらの優遇制度は延長される可能性もありますが、対象となる世帯の方は是非この機会を利用し、お得にマイホーム購入を実現してください。