最近のマンションには「24時間換気システム」が設置されています。この24時間換気システムのスイッチをずっとつけておくべきか、OFFにしても差し支えないのかという質問をいただくことがあります。答えは「常にスイッチはONに」つまり、つけっぱなしにしておくのが原則です。今回は24時間換気システムの仕組みや必要性についてお話します。
24時間換気システムの概要と必要性
24時間換気システムとは、一言で言うと機械で「吸気」と「排気」を行い、空気の循環や入れ替えを行う仕組みです。昔の日本家屋はほとんどが木造住宅でした。和室の上部に取り付けられた透かし彫りの飾りを見たことはありませんか?これは「欄間」と呼ばれる日本家屋の知恵の一つで、採光や通風を目的としています。そのほかにも、古民家に使われている「土壁」は表面には小さな気泡があり、自動的に外と中の空気を入れ替えてくれています。 空気循環が頻繁に行われることで、熱や湿気がたまりにくく、結果的に夏でも涼しく過ごせる家屋でした。
しかし、マンションのような集合住宅では、構造体そのものがコンクリートや断熱材で仕上げられています。窓ガラスも隙間のないサッシが取り付けられ、高気密・高断熱が実現しました。昔のように隙間風で悩まされることもなく、冷暖房が効率よくように工夫されていったのです。
一方でこれまでのように屋内の空気が自然に流れず、部屋の中に汚い空気が停滞し籠るようになりました。
そこで機械の力を借りた「24時間換気」で、強制的に空気を入れかえるシステムが出現したのです。
社会問題となった「シックハウス症候群」
実は24時間換気は、2003年7月に改正された建築基準法で設置が義務付けられた設備です。その背景には、社会問題となった「シックハウス症候群」があります。
シックハウス症候群とは、住宅に使用されている建材や家具、日用品などから発散されるホルムアルデヒトなどの化学物質によって引き起こされる健康被害をいいます。新築マンションに入居すると、頭痛や鼻水、のどの痛みといった症状に悩まされる人が多く見られました。その原因はクロスやフローリングを貼る際に使用する接着剤の有害物質です。有害物質ホルムアルデヒドとクロルピリホスの2物質を特定し、クロルピリホスは使用禁止、ホルムアルデヒドは使用量を明示し、注意喚起するという規制が改正建築基準法に盛り込まれました。そして接着剤の安全基準を示す目印として「F☆☆☆☆(エフフォースター)」が誕生します。F☆☆・F☆☆☆・F☆☆☆☆と安全性にランク付けがあるため、出来るだけ最上級のF☆☆☆☆を選ぶことが推奨されています。
さらにもう一つの対策として、原則すべての建築物に機械換気設備の設置が義務付けられました。有害物質を排出し、部屋の中の空気をきれいに保つことで健康的な生活が送れるよう、法律で規制したのです。
24時間換気の仕組み
換気設備というと、キッチンやトイレ・浴室の換気扇を思い浮かべる人も多いと思いますが、それらは必要な時だけ稼働する局所的な設備です。一方24時間換気システムはお部屋全体の換気を行うものです。まずリビングダイニングや寝室といった居室の外に面した壁に給気口を設置することで外の新鮮な空気を取り込みます。そして浴室やトイレ、洗面等の排気口から室外へ排気するといった空気の流れを作ります。居室のドアの下に数センチの隙間が空いているのを見たことがある人も多いと思いますが、これは空気の通り道を確保するための隙間です。
規定では換気回数0.5回/h以上(1時間当たりに部屋の空気の半分が入れ替わること)の機械換気設備を設置する必要があると定められています。2時間もあれば、部屋全体の空気がすべて入れ替わる計算になります。
24時間換気システムには次の3種類があります。
- 第一種換気方式=外気の「給気」と室内の空気の「排気」の両方を換気扇等の機械によって行うもの
- 第二種換気方式=外気の「給気」を機械で行い、「排気」は自然に任せて行うもの
- 第三種換気方式=外気の「給気」を自然に任せて、室内の空気の「排気」を換気扇等の機械で行うもの
住宅では第一種もしくは第三種換気方式が採用されますが、第一種換気方式は効率が良い分、コストが高くなってしまうデメリットがあるため、多くが第三種換気方式になっています。
定期的なお手入れを
このように24時間換気システムは、健康的なマンションライフを送るためにも常時つけっぱなしにしておくべき設備です。節約でOFFにしている人、必要な時だけつけていた人は、すぐにONに切り替えてください。
最後に24時間換気システムは定期的なお手入れが必要です。吸気口のフィルターは定期的に清掃・交換を行い、常にきれいな空気が取り込めるようにメンテナンスしましょう。