空き家のままで大丈夫?空き家になった相続物件はいつまでに売却すべきか

不動産コラム

ここ最近、放置されたままの空き家が急増し、大きな社会問題になってきています。ご自身の周りにも、相続した不動産が空き家になっているという方がいらっしゃるのではないでしょうか?

空き家を処分するにも金銭的な負担が発生するため、ついつい後回しになってしまいがちですが、そのまま放置していると大きな問題になってしまうこともあります。実際、平成27年に制定された「空き家対策特別措置法」で、「周りに危害を与える可能性がある」「迷惑となっている」と判断された空き家について、改善を促す行政指導を出すことができるようになり、今後は増えることも予想されます。

今回は、空き家を処分するタイミングについて、詳しく見ていきましょう。

「空き家対策特別措置法」が与える影響について

全国的に深刻化してきた空き家問題に対処するため、平成27年に「空き家対策特別措置法」が施行されました。各自治体の判断で、立ち入り調査や行政指導を行うことができるようになり、問題解決に向けた進展が期待されています。

また、空き家の固定資産税についても優遇措置が撤廃されました。「周りに危害を与える可能性がある」「迷惑となっている」と判断された「特定空家等」については実質増税になってしまいますので、早急に処分を検討する必要があります。

「空き家対策特別措置法」は、空き家の所有者にとってはかなり厳しいものになっていますので、空き家の売却が増えることは確実です。売却される空き家が増えると、競争が激しくなり、買い手を見つけることは難しくなります。希望金額で売れなくなる空き家も増えると予想されますので、なるべく早期に手放すことをお勧めいたします。

空き家になってから3年以内に売却を

少子高齢化が進んだこともあり、「相続した実家を空き家のまま放置している」「高齢者施設に入居したが、実家は空き家のまま」といった方が急増しています。

誰も住まなくなった建物は、急速に劣化が進んでしまうため維持するためのコストも年々大きくなります。また、固定資産税などの税負担も発生し、「特定空家等」に指定されると税制上の優遇措置もなくなり非常に不利になります。早めの処分が必要となりますが、具体的にはどの程度の猶予期間があるのでしょうか。

実家が空き家になった場合の猶予期間

不動産の売却益には、住民税と所得税が課税されます。税率は「所有期間が5年以下の場合は39%、5年超の場合は20%」となっており、負担は小さくありません。居住用不動産については、一定の条件を満たせば、3000万円の特別控除が軽減策として適用されることになっていますが、「所有者が住まなくなってから3年目の12月31日まで」に売却しない場合は適用外という条件がついています。

「介護施設に入所」、「子供の家で同居」といった様々な理由があるとは思いますが、税制の優遇措置を考えると、「空き家」になった日から3年後の年末までに売却することが求められます。

空き家の実家を相続した場合の猶予期間

従来から、居住用不動産の3,000万円控除は「亡くなった親と同居していた」相続人にも適用されていましたが、単に実家を相続した場合は、マイホームではないため適用外になっていました。

しかし、平成28年の税制改正で、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が新設され、相続人も3,000万円控除と同じような軽減措置を受けることができるようになりました。この控除も期限が設定されており、「相続の開始があった日から3年目の12月31日までの売却」となっています。
※この制度自体に期限があります。適用期限は、平成28年(2016年)4月1日から令和5年(2023年)12月31日までの間です。

この特例は「相続の開始の直前において、被相続人が被相続人居住用家屋の居住の用に供していた」場合に適用されることになっていましたが、令和元年度の税制改正により、被相続人が相続開始の直前に老人ホームに入居していた場合であっても、一定の要件を満たすことにより、この特例の適用が認められるようになりました。

一定の要件には、「被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと」「事業の用、貸付けの用または被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと」および「要介護認定もしくは要支援認定または障害支援区分の認定等」が関連してきますので、詳しくは国税庁のホームページをご参照ください。

制度自体の適用期限も考慮すると、離れて暮らしている親が介護施設などに入って実家が空き家になった場合は、親が元気な内に売却することが最善ではないでしょうか。

更地をおすすめできない理由

空家については、管理上のリスクを考慮して、更地にしてしまうケースもありますが、「固定資産税が跳ね上がる」「マイホーム(居住用不動産)の3,000万円控除が使えなくなる」という2点から問題があります。

解体してすぐに売却できれば問題ありませんが、状況次第では長期間売れないことも考えられます。この間も固定資産税は発生しますので、単純に税金の負担増になってしまいます。

また、「家屋を取り壊した日から1年以内に売買契約を締結する」ことが、「マイホーム(居住用不動産)の3,000万円控除」の適用条件になっており、更地にすることで適用条件が厳しくなることにもご留意ください。

これらのことを総合的に考えても、空家を放置しておくことにメリットはありません。心情的に手放すことができない場合は、耐震補強やリフォームをして賃貸物件として活用することも一つの方法です。

空家について、お悩みの場合はお気軽にご相談ください。売却と土地活用の両面から状況に応じた解決策をご提案いたします。