住宅ローンは「超長期」時代へ突入?!住信SBIネット銀行が50年ローンを開始

不動産コラム

ネット銀行大手の住信SBIネット銀行が、2023年8月4日より、住宅ローンの借入期間について「最長50年まで」取り扱いを開始することを発表しました。これまで一部の地方銀行で最長40年や50年の住宅ローンはありましたが、ネット銀行では初となります。こうした動きにはどういった背景があるのか、また35年返済と50年返済では何が違うのかを解説します。

近年の住宅市場の傾向

首都圏でも地方都市でも、近年はとにかく不動産価格が高騰している現実があります。マイホーム探しをしている人は、特にここ2~3年で値段が上がったことを実感していると思います。

原因のまず一つ目は、円安や石油価格等の影響を受けた建築資材価格の高騰です。さらに普及し始めているZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や省エネ住宅などの高性能住宅は建築コストが高くなるため、さらに戸建て・マンションの価格高騰を招いています。

今後もこうした不動産価格の高騰は継続する見込みと言われており、これからマイホームを購入しようとする人には負担が大きくなります。さらに住宅ローンの借入れに関してもハードルが高くなり、特に若い世代にとってはマイホーム取得が困難になりつつあります。

住信SBIネット銀行の商品概要

8月4日から取り扱いが始まった住信SBIネット銀行の商品概要を詳しく見てみましょう。

対象となるのは住宅ローンとNEOBANK住宅ローンの2つで、フラット35フラットパッケージローンは対象外です。そして利用できる人は以下の条件を満たしている必要があります。

  • 借入時年齢が満18歳以上65歳以下で、完済年齢が80歳未満であること
  • 安定かつ継続した収入があること
  • 指定の団体信用生命保険に加入が認められること
  • 国内に居住していること

いくら最長50年の借入れが可能になったからといっても、完済年齢の要件は注意が必要です。80歳未満で完済ということは、79歳-50年で29歳までの人しか利用できないことになります。あくまで最長期間ですので、例えば32歳の人であれば、最長47年借入可能という計算になります。

これまで借入期間は最長35年でしたが、残念ながら45歳を境に借り入れできる年数が短くなっていくことに変わりありません。今回の発表は、20代から30代前半の若年層のマイホーム取得を促進する内容と言えます。

なお、35年超50年以内で借入をした場合には、注意点があります。それは住宅ローンの適用金利に年0.15%が上乗せになることです。借入期間が延びることで月々の返済金額が抑えられるのが最大のメリットですが、年0.15%の上乗せがどのくらい影響するかはしっかりとシミュレーションしましょう。

35年返済と50年返済はどのくらい違う?

では実際に35年返済と50年返済では月々の返済金額はどのくらい変わってくるのかを検証してみましょう。

例)借入金額:4,000万円 元利均等返済 変動金利0.299%(2023年8月適用金利)ボーナス払いなし

【35年返済】

月々返済額   100,320円 

年間返済額   1,203,840円

【50年返済】 プラス0.15%→0.499%( )は金利0.299%の場合

月々返済額   74,442円(71,782円)

年間返済額  893,304円(861,384円)

返済年数が延びることによる最大のメリットは返済額の軽減です。上記の例では月々の返済金額の差額は25,878円、年間返済額の差は310,536円にもなります。まだまだ年収も低い世代にとっては、月々の返済が少なくて済むのは非常に助かります。

ちなみに()内の金額は0.15%の上乗せをせず同じ金利で算出した返済額です。0.15%の金利差はわずか2,660円でした。

50年返済のデメリット

このように50年返済の最大の魅力は返済金額が軽くなることですが、返済年数が延びることによるデメリットも知っておきましょう。

まずは35年返済よりも総返済金額が大きくなることです。単純に15年長く借入をし続けることによって金利負担が増えるためです。

上記の例での総返済金額を比較してみましょう。

【35年返済の総返済金額】 42,135,562円 

【50年返済の総返済金額】 44,666,946円

総返済金額の差額はなんと2,531,384円になります。

住宅ローンは借金であると同時に保険でもある

総返済金額を比較すると250万円の差という結果になりましたが、これは35年、50年それぞれ最終回まで支払いをした場合の計算です。

実は住宅ローンの「平均」完済年数は約20年だと言われています。35年間だと480回の返済回数になりますが、きっちり480回支払う人はほとんどいません。ひとつにはほとんどの人が「定年」までの完済を目標に繰り上げ返済などを計画的にしていること。また一方で、残念ながら不慮の事故や病気などによって団体信用生命保険で残債が支払われている事実があります。

住宅ローン=保険と考えると、万が一の時に家族の住居が確保できる安心感を手に入れることが出来ます。「高いから」とマイホームを諦める前に、50年返済の住宅ローンをシミュレーションしてみましょう。