「3000万円の特別控除」とは?−不動産売却時の節税−

不動産コラム

持ち家であるマンションや戸建てを売却した際に、利益(儲け)が出ると課税対象となります。これを譲渡所得税と呼びますが、実は3000万円控除という税金を軽減できる措置があります。

つまり、不動産を売却した金額(譲渡価格)から物件を購入した時にかかった金額(取得費用)と売却にかかった経費(譲渡費用)を差し引いた金額(譲渡所得)が3000万円までは控除できるのです。この制度を利用すれば、譲渡所得が3000万円を下回っていれば税金はゼロになります。詳しく見ていきましょう。

3000万円の特別控除

この制度の正式な名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と言います。

例えば、12年前に3500万円で購入したマンションが2800万円で売却できたとします。譲渡所得税がいくらになるか計算してみましょう。(減価償却と仲介手数料などを考慮しています。)

譲渡価格2800万円ー(取得費1200万円+譲渡費用100万円)=1500万円

譲渡所得金額は1500万円となります。所有期間は5年を超えていますので長期所有の税率となります。

まず所得税は 1500万円×税率15%=225万円

復興特別所得税は 225万円×2.1%=47,250円

住民税は 1500万円×税率5%=75万円

合計304万7,250円となります。

このケースで3000万円の特別控除を利用すると、そもそも譲渡所得が3000万円を下回る1500万円であるため非課税となります。0円か304万円納税するか、差は非常に大きいものとなります。

ちなみに売却した不動産を何年所有していたかという短期・長期に関係なく3000万円を控除することが出来ます。

適用条件に注意

ただし、この3000万円の特別控除を利用するにはいくつか条件があります。

①その家が「居住用」であること

特例の名称に「居住用財産」とあるように、名義人自身が住むための家であることが必須条件となります。当然別荘やセカンドハウスは対象外ですし、制度を利用する目的で一時的に住んでいたと認められる場合も利用出来ません。名義人が転勤による単身赴任で住んでいなかった場合でも配偶者や家族が継続して住み、単身赴任が終わって同居を再開した場合には利用出来ます。

また住まなくなったマイホーム(空家)の場合は、住まなくなって3年後の12月31日までに売却することが必要です。

②購入者が親族でないこと

売却の相手が親子や夫婦など親族でないことが条件です。不動産会社が仲介した全くの赤の他人であれば問題ありません。これは親密な関係にある人が売却の相手方であると、適正な価格で契約されたかどうか疑われたり、税金を逃れるための売却か判断できかねるためです。

ただし、夫婦でも「離婚した場合の財産分与」は例外として認められています。離婚後に譲渡したものは配偶者に対するものではないとされるため、3,000万円の特別控除を使うことができます。

③他の特例を利用していないこと

そもそも、3000万円の特別控除は「売った年の前年および前々年」に使用していた場合には適用されません。つまり、3年に一度しか使えないのです。また、住宅を売る年において住宅ローン控除や認定長期優良住宅の特別控除を利用している場合に使うことはできません。

住宅ローン控除と併用できない

前述のように売却後すぐに新たに住宅を購入するいわゆる住み替えのケースでは、注意が必要です。住宅ローンを組んだ場合には、通常利用できる住宅ローン控除が使えないことになります。このケースでは住宅ローン控除か3000万円控除か、選択制となります。前の家で3000万円控除を利用して節税するか、新しい家の住宅ローン控除で還付を受けるか、事前にシミュレーションして比較検討が必要です。

一方、住宅ローン控除の適用条件を見てみると、「住宅ローンの対象となる住居に居住した年とその前後2年間(合計5年間)の間に3000万円の特別控除を利用している場合、住宅ローン控除は利用できなくなる」とあります。つまり、売却してから2年ほどは賃貸に入居し、また新たに住宅ローンを利用してマイホームを購入すれば住宅ローン控除も利用できることになります。契約から引渡しまで何ヶ月もかかる新築マンションの場合には、事前に売買契約を結んでいても入居年が2年以降であれば大丈夫ということになります。両方の特例を利用したい場合には、計画的に住み替えを行いましょう。